「あなたの口座が犯罪に使われた」。そんな電話を受けたら、どうしますか。名古屋市で78歳の男性が、まさにこの電話を受けました。男性は過去に2度、だまされています。それでも3度目は見破りました。相談を受けた警察が動き、26歳の男が現行犯逮捕されました。
口座が犯罪に使われたという電話は、ニセ警察詐欺でよく使われる切り出しです。なぜ3度目で見破れたのか。どう相談すればよかったのか。事件の流れと、自分や家族を守る手順を、やさしく整理していきます。
78歳男性が3度目の電話で被害を防げたのはなぜ?
同じ人が3度も狙われました。2度は被害に遭い、3度目で踏みとどまっています。ここには、誰にでも使える判断のヒントがあります。まずは事件の全体像から見ていきましょう。
事件の舞台となった名古屋市緑区での出来事
舞台は名古屋市緑区です。被害に遭いかけたのは、緑区に住む78歳の会社役員の男性でした。男性のもとに、お金をだまし取ろうとする電話がかかってきます。
電話の主は、もっともらしい理由を並べました。「犯罪収益のお金が口座に入っているか確認する必要がある」という内容です。聞いただけでは、本物の連絡なのか判断しづらい言い回しでした。
2度の被害から一転、3度目で踏みとどまった経緯
実はこの男性、数日前にも同じような手口で被害に遭っています。2度にわたり、合計230万円をだまし取られていました。同じ人が短期間で繰り返し狙われた形です。
それでも3度目は違いました。電話の途中で「おかしい」と感じ取ったのです。過去の苦い経験が、今回の判断につながった可能性があります。
この事件から読者が学べること
学べることは、とてもシンプルです。違和感を覚えたら、その場で答えを出さないこと。これに尽きます。電話の相手に急かされても、いったん立ち止まる余地は必ずあります。
そして、一人で抱え込まないことです。男性は警察に相談しました。この一手が、逮捕につながっています。相談という行動が、被害を止める鍵になりました。
今回の詐欺事件はどんな流れで起きた?
事件は数日の間に進みました。電話が来て、不審に気づき、相談し、逮捕に至ります。短い期間に多くの動きがありました。時間の流れに沿って整理します。
6月6日から8日にかけてかかってきた電話の内容
警察によると、電話があったのは6月6日から8日にかけてです。相手は男性に、口座の確認が必要だと持ちかけました。お金に関わる不安をあおる内容です。
この時点では、男性もすぐには詐欺と断定できませんでした。専門的な言葉を交えられると、つい話を聞いてしまうものです。相手はそこを狙っています。
妻の口座情報を尋ねられた場面
流れが変わったのは、ある質問でした。相手が、男性の妻名義の口座情報を聞いてきたのです。ここで男性は強い違和感を覚えます。
本人の口座だけでなく、家族の口座まで聞く。この不自然さが、見破る決め手になりました。確認のためと言われても、家族の口座情報を電話で伝える理由はありません。
警察への相談から逮捕までの時系列
不審に思った男性は、警察に相談します。警察は、犯人側が指定した瑞穂区内の駐車場で警戒に入りました。受け渡しの場所を押さえる動きです。
そして、その駐車場に容疑者が現れました。警察は、現れた男をその場で現行犯逮捕します。相談から逮捕まで、流れは下の表のとおりです。
| 段階 | 起きたこと |
|---|---|
| 電話 | 6月6日から8日に「口座確認が必要」と連絡 |
| 違和感 | 妻名義の口座情報を聞かれ不審に思う |
| 相談 | 男性が警察に相談 |
| 警戒 | 指定の駐車場で警察官が待機 |
| 逮捕 | 現れた26歳の男を現行犯逮捕 |
「犯罪収益の確認が必要」という電話とは?
詐欺の入り口には、決まった型があります。今回の「犯罪収益の確認」も、その一つです。なぜこの言葉が使われるのか。仕組みを知れば、次は落ち着いて対応できます。
どんな名目で電話がかかってくるのか
電話の名目は、いくつかのパターンがあります。代表的なものを並べてみます。
- 「あなたの口座が犯罪に利用されている」
- 「あなたの携帯電話が不正に契約されている」
- 「あなたに逮捕状が出ている」
どれも、聞いた人を不安にさせる内容です。身に覚えがなくても動揺する。相手はその心理を利用します。
なぜこの言い回しを信じてしまうのか
「犯罪収益」「口座確認」。こうした言葉は、いかにも公的に聞こえます。だからこそ、つい本物だと感じてしまうのです。
さらに、相手は「資産を守るため」「潔白を証明するため」といった理由を重ねます。善意の協力に見せかけるのが手口です。協力しているつもりが、被害につながります。
実際の警察はこうした電話をしない理由
ここで大切な事実があります。本物の警察は、電話で資産の提出やお金の振り込みを求めません。これは警察庁も注意を呼びかけている点です。
つまり、お金や口座の話を電話で持ち出された時点で、詐欺を強く疑ってよいのです。この一線を覚えておくだけで、判断はぐっと楽になります。
男性が「不審だ」と気づけた分岐点とは?
同じ電話でも、被害になるかどうかは分かれます。今回はどこで流れが変わったのか。気づきの分岐点を具体的に見ていきます。再現できる行動として捉えてみてください。
家族名義の口座情報を求められた違和感
決め手は、妻名義の口座情報を聞かれたことでした。自分の話だと思っていたのに、急に家族の口座が出てくる。この飛躍が、不自然さを際立たせました。
確認のためという理由は、一見もっともらしく聞こえます。けれど、家族の口座を電話で伝える正当な理由はありません。この感覚が男性を守りました。
過去2度の経験が判断材料になった可能性
男性は、すでに2度だまされています。つらい経験です。しかし、その記憶が3度目の判断を後押しした面もあります。
「前と似ている」。そう感じ取れたことが大きいのです。過去の手口との共通点に気づく力は、誰でも後から育てられます。
「一旦切って確認する」が有効な理由
詐欺の電話は、たいてい急かしてきます。今すぐ、と迫るほど怪しいと考えてよいでしょう。急がせるのは、考える時間を奪うためです。
だからこそ、いったん電話を切る対応が効きます。切って、折り返して、確かめる。この間(ま)を作るだけで、冷静さが戻ってきます。
警察に相談してから現行犯逮捕に至った流れとは?
相談は、ただの報告では終わりませんでした。警察が動き、現場を押さえ、逮捕に至ります。相談がどんな結果につながったのか。その過程を追います。
男性が警察へ相談した内容
男性は、不審に思った電話の内容を警察に伝えました。妻の口座情報を聞かれたこと。お金の確認を求められたこと。具体的なやり取りを共有したのです。
相談を受けた警察は、詐欺の疑いがあると判断しました。早めの相談が、その後の動きを可能にしています。一本の連絡が起点になりました。
指定された駐車場で警戒していた経緯
犯人側は、受け渡しの場所として瑞穂区内の駐車場を指定していました。警察は、その情報をもとに現場で警戒に入ります。容疑者が来る瞬間を待ちました。
ここで効いたのが、被害者と警察の連携です。相手に気づかれずに現場を押さえる。この備えが逮捕の土台になりました。
現れた容疑者を現行犯逮捕した瞬間
そして、指定の駐車場に男が現れます。待機していた警察は、その男を現行犯逮捕しました。受け渡しの現場での確保です。
逮捕されたのは、神戸市の無職の男(26)でした。調べに対し、男は「言いたくないです」と黙秘しています。捜査は、過去の被害との関連も含めて続いています。
「だまされたふり作戦」とはどんな捜査手法?
今回のような逮捕には、決まった捜査手法が関わることがあります。それが「だまされたふり作戦」です。名前は聞いたことがあっても、中身は意外と知られていません。
被害者と警察が連携する仕組み
だまされたふり作戦とは、被害者と警察が協力して受け子を捕まえる手法です。被害者は、詐欺と気づいたあとも、気づかないふりを続けます。
そのうえで、相手をおびき寄せます。受け取りに来た瞬間を狙うのが基本の形です。警察は近くで警戒し、タイミングを計ります。
模擬紙幣などダミーを使う場面
実際の現金を渡す必要はありません。本物そっくりの模擬紙幣を用意し、それを渡す方法が取られます。お金を失わずに、相手を確保できる仕組みです。
別の事件では、模擬紙幣300万円を渡し、受け子を逮捕した例もあります。本物のお金を使わない点が、被害者にとって安心材料になります。
この作戦で受け子が逮捕される根拠
「だましたふりなら、罪にならないのでは」。そう感じる人もいるかもしれません。しかし、最高裁の判断では、こうした場合も詐欺未遂罪が成立するとされています。
つまり、現金を受け取れなくても逮捕の対象です。受け子という役割そのものが、犯罪に問われます。軽い気持ちで関わる余地はありません。
逮捕された26歳の男はどんな容疑だったのか?
逮捕された男には、どんな容疑がかかっているのでしょうか。役割の呼び名や、今後の見通しも気になるところです。事件の加害者側についても整理します。
問われている詐欺未遂の疑い
男にかけられているのは、詐欺未遂の疑いです。男性は、お金を渡す前に踏みとどまりました。そのため、被害は未遂で止まっています。
未遂であっても、罪に問われます。実行に移そうとした行為が問題になるためです。現場に現れた事実が、容疑を裏づけています。
現金を受け取りに来る「受け子」という役割
こうした実行役は「受け子」と呼ばれます。だまされた人から、現金やカードを受け取る係です。指示役から命じられ、現場に向かいます。
特殊詐欺で検挙される人の多くは、この受け子などの末端役です。捕まりやすいのは、いつも現場に来る役です。割に合わない立場と言えます。
黙秘している容疑者と今後の捜査
男は調べに対し、はっきりした説明をしていません。「言いたくないです」と黙っています。背後関係はまだ見えていません。
警察は、男性が以前だまし取られた230万円の被害との関連も調べています。一連の犯行かどうかが、今後の焦点です。捜査の行方が注目されます。
なぜ同じ高齢者が繰り返し狙われたのか?
一度だまされた人が、また狙われる。今回はまさにその形でした。なぜ繰り返されるのでしょうか。背景を知ると、防ぎ方も見えてきます。
一度被害に遭うと再び標的になりやすい背景
詐欺グループは、名簿の情報をもとに電話をかけます。一度反応した人は、次の標的になりやすいのです。「だましやすい相手」と見なされてしまいます。
だからこそ、被害のあとの備えが大切です。一度断っても、それで終わりではありません。再び来ることを前提に構えておく必要があります。
合計230万円を先にだまし取られていた事実
今回の男性は、3度目の前に2度被害に遭っています。被害額は合計230万円でした。短い期間に、続けて狙われた形です。
この事実は、繰り返しのリスクをよく示しています。同じ手口を変えて何度も仕掛けてくる。その執拗さに注意が必要です。
名簿情報を使った無差別な架電の実態
詐欺の電話は、特定の一人だけを狙うわけではありません。多くの人に、片っ端からかけています。たまたまつながった相手を、そのまま標的にします。
つまり、誰にでも来る可能性があります。「自分は大丈夫」という思い込みが、いちばん危ういのです。他人事にしない姿勢が身を守ります。
急増する「ニセ警察詐欺」とはどんな手口?
今回の電話は、いま増えている「ニセ警察詐欺」とよく似ています。警察官をかたる手口です。どんな特徴があるのか。最近の傾向とあわせて見ていきます。
警察官をかたって不安をあおる典型パターン
ニセ警察詐欺では、相手が警察官を名乗ります。そして「あなたの口座が犯罪に使われた」などと告げます。今回の電話と同じ入り口です。
さらに「逮捕される」と不安をあおります。焦りで判断力を奪うのが狙いです。偽の警察手帳や逮捕状の画像を見せる例も報告されています。
発信元番号の偽装やビデオ通話への誘導
手口は年々細かくなっています。着信画面に、本物の警察署の番号を偽装表示させる例があります。表示を信じてしまうと危険です。
また、電話からLINEのビデオ通話へ誘導する例も目立ちます。「+」から始まる国際電話からかかってくることもあります。見慣れない番号は、出ない判断も有効です。
2025年の被害状況からわかる深刻さ
警察庁の発表によると、2025年の特殊詐欺の被害額は約1414億円にのぼりました。このうちニセ警察詐欺は、件数で約4割を占めています。被害額では約7割です。
平均の被害額も大きいのが特徴です。全資産を奪われる例もあります。幅広い世代が被害に遭っており、高齢者だけの問題ではありません。
同じような電話を受けたらどう対応すべき?
知識を、行動に変えておきましょう。実際に電話が来たとき、迷わず動けることが大事です。覚えておきたい手順を、順番に確認します。
まず一旦電話を切って折り返す
警察官を名乗る電話を受けたら、まず落ち着きます。所属と担当者の名前を聞きます。そして「一度切って折り返します」と伝えて、電話を切ります。
折り返すときは、正規の番号にかけ直します。相手が伝えた番号は使いません。かけ直しの番号は、自分で調べるのが鉄則です。断りの一言は、こんな形で十分です。
「いったん電話を切らせていただきます。あらためて、こちらから警察署に確認のうえ折り返します」
所属と担当者を確認し家族に相談する
切ったあとは、一人で判断しないようにします。家族や知人に、電話の内容を話してみてください。第三者の目が入ると、冷静になれます。
少しでも不安が残れば、最寄りの警察署や交番に連絡します。相談すること自体が、被害を防ぐ近道です。ためらう必要はありません。
資産や口座情報を絶対に伝えない
最後に、いちばん大事な点です。電話の相手に、口座番号や暗証番号を伝えてはいけません。お金の振り込みにも、いっさい応じないことです。
くり返しになりますが、本物の警察は電話でお金を求めません。お金や口座の話が出たら、それは詐欺。この基準を、家族とも共有しておきましょう。
家族や周囲ができる被害防止策とは?
詐欺対策は、本人だけの問題ではありません。まわりの支えが、大きな力になります。家族としてできることを、具体的に挙げていきます。
高齢の家族と手口を共有しておく
まずは、最近の手口を家族で話しておくことです。「口座が犯罪に使われた」という電話が来たら詐欺。この一点を、あらかじめ伝えておきます。
知っているだけで、対応はずいぶん変わります。事前の共有が、いざというときの落ち着きを生みます。今回のような事例を話題にするのも有効です。
留守番電話や着信拒否を活用する
電話そのものに出ない工夫も役立ちます。常時、留守番電話に設定しておく方法があります。知らない番号は、録音を確認してからかけ直せば十分です。
国際電話の着信を拒否する設定も検討できます。出ない、という選択肢を持っておくと安心です。会話が始まらなければ、だまされようがありません。
相談窓口(#9110・最寄り警察署)への連絡
困ったときの連絡先も、決めておきましょう。警察相談専用電話の#9110は、緊急でない相談に使えます。不審な電話の相談先として覚えておくと便利です。
急ぎの場合や、現に被害が起きそうなときは110番です。連絡先を紙に書いて電話のそばに貼る。それだけで、いざというとき動きやすくなります。
よくある質問(FAQ)
本物の警察が電話で口座やお金の話をすることはある?
ありません。本物の警察は、電話で資産の提出や振り込みを求めることはないとされています。口座番号や暗証番号を電話で聞くこともありません。
ですから、電話でお金や口座の話が出た時点で、詐欺を疑ってよいのです。迷ったら、最寄りの警察署に自分から確認しましょう。
一度詐欺を断ったらもう狙われない?
そうとは限りません。詐欺グループは、名簿をもとに何度も電話をかけてきます。一度反応した相手は、再び狙われやすい傾向があります。
今回の男性も、2度被害に遭ったあと3度目を受けています。断ったあとも、油断せずに構えておくことが大切です。
「だまされたふり作戦」は被害者が自分から提案できる?
作戦の実施を決めるのは警察です。被害者が単独で仕掛けるものではありません。危険を伴うため、必ず警察の指示のもとで行われます。
まずやるべきは、不審な電話を警察に相談することです。そのうえで、警察が状況を見て判断します。自己流の対応は避けてください。
不審な電話を受けただけでも警察に相談していい?
もちろん相談できます。被害に遭う前でも、不審に感じたら連絡してよいのです。早い相談が、被害を未然に防ぎます。
緊急でなければ#9110、急ぎなら110番が使えます。「念のため」で連絡することを、ためらわないでください。
国際電話や「+」から始まる番号は出ても大丈夫?
心当たりがなければ、出ない判断も有効です。詐欺の電話が、国際電話からかかってくる例が増えています。「+」で始まる番号には注意が必要です。
どうしても気になる場合も、折り返しは慎重にします。番号を検索して、正体を確かめてからにしましょう。
まとめ
今回の事件は、相談という行動が被害を止めた例でした。78歳の男性は、妻の口座を聞かれた違和感を見逃しませんでした。電話を切り、警察に相談し、現場での現行犯逮捕につながっています。お金や口座の話が電話で出たら詐欺。この基準を、家族とも共有しておきたいところです。
一方で、手口は今回の電話型だけにとどまりません。最近はSNSをきっかけにした投資詐欺やロマンス詐欺の被害も広がっています。著名人をかたる広告から誘導される例もあり、入り口は多様です。電話だけ警戒すれば安心とは言えません。連絡先を電話のそばに貼る。家族と合言葉を決めておく。こうした小さな備えから始めてみてください。
参考文献
- 「“3度目”は騙されず…数日間で2度の詐欺被害の78歳男性に不審な電話 警察に相談し26歳男を現行犯逮捕」- 東海テレビ/FNNプライムオンライン
- 「警察官等をかたる詐欺」- 警視庁ホームページ
- 「ニセ警察詐欺に注意!」- 警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ
- 「その電話、本当に警察? 専門家に聞く、「ニセ警察詐欺」の手口と対策」- LINEヤフー株式会社
- 「SNS型投資、ロマンス詐欺被害が過去最悪 「ニセ警察」急増」- 時事ドットコム