カンボジアやミャンマー、中国に置かれた海外詐欺拠点で、生成AIを使う専用空間「AIルーム」の存在が捜査関係者の話で明らかになりました。ニセ警察官を装ったかけ子が、ビデオ通話のときに自分の顔と声を別人にすり替えていたのです。海外詐欺拠点「AIルーム」の手口は、いま日本で被害が広がっているニセ警察詐欺の中核にありました。
この記事では、生成AIを利用した海外詐欺拠点「AIルーム」の仕組みを丁寧に分けて整理します。さらにビデオ通話のすり替えを見抜く兆候、家族を守るために今日できる行動、被害に遭ったときの相談先までまとめました。ニュースを読んで不安になった方が、最後まで読めば次の一歩が見える内容です。
海外詐欺拠点で発覚した「AIルーム」とは?
カンボジア北西部ポイペトの摘発をきっかけに、詐欺拠点の内部に「AIルーム」と呼べる仕切られた空間があったことが分かってきました。ここでは何が行われていたのか、その輪郭を順番に見ていきます。捜査資料に基づく、これまで表に出ていなかった部分です。
防音ブースの隣にある仕切られた空間の正体
詐欺拠点はオフィスビルの一室のような場所にありました。指示役やかけ子の待機スペースが広く取られ、個別の電話ブースには防音加工が施されていたといいます。声が外に漏れない設計です。
その並びに、壁で仕切られた小さな空間がありました。捜査員の目を引いたのは、この一角の使われ方でした。複数の容疑者が「生成AIで警察官を装ってビデオ通話をしていた」と説明したのです。AIを使う作業だけを切り出した、専用の部屋でした。
パソコン画面に並んでいた複数の男性の顔画像
押収品の写真には、パソコン画面の下部に男性の顔画像がいくつも並んでいる様子が写っていました。画面の上部には、かけ子とみられる男の姿が映っています。用意された顔のストックから、その日になりすます一枚を選んでいたと考えられます。
声についても、別人のものに変換していたとされます。顔と音声を同時にすり替える。これによって、本人が画面の前にいながら、まったく違う人物としてビデオ通話を成立させられるわけです。
愛知県警が押収品の写真から突き止めた経緯
きっかけは、愛知県警がポイペト拠点の捜査で押収したスマートフォンなどでした。中に残っていた拠点内部の写真と、逮捕した容疑者らの供述を突き合わせる作業が進みました。
その照合の中で、AIルームの存在が浮かび上がります。同じ手口がカンボジアだけでなくミャンマーや中国の拠点でも確認されました。海外の詐欺グループが、組織として体系的にAIを使っている実態がつかめたのです。
「かけ子」が生成AIで顔と声を差し替える理由とは?
なぜわざわざAIを使うのか。ここを押さえると、防御のヒントも見えてきます。摘発逃れ、信用作り、運用の効率化。三つの動機が重なっていました。
摘発を逃れるために本人を特定させない狙い
ビデオ通話の画面はそのまま証拠になり得ます。被害者が録画していたら、かけ子の顔がそのまま捜査資料になってしまいます。AIで別人の顔をかぶせれば、その心配が消えます。
声も同じ理屈です。声紋から個人を特定される可能性を断つために、別人の音声に変換します。かけ子側が自分の身を守るための偽装として、AIが組み込まれていたわけです。
ビデオ通話で疑われたときの信用補強として使われる
電話だけのオレオレ詐欺と違い、ニセ警察詐欺ではビデオ通話に切り替える場面があります。「本物の警察官だと証明するために顔を見せる」という口実です。ここで普通の若い男の顔が映ったら、相手は怪しみます。
そこでAIが、いかにも年配の警察官らしい顔と落ち着いた声を作り出します。被害者の警戒心を逆に解く道具として生成AIが使われていたのです。疑いを晴らすための小道具と言えます。
同じ拠点でも別人を装い分けられる利便性
一人のかけ子が、案件ごとに違う顔を選べます。今日は警視庁、明日は地方の警察署。役柄に合わせて顔と声を切り替えれば、同じ人物が複数の警察官を演じ分けられます。
人手を増やさずに犯行の幅を広げられる仕組みです。運用コストを抑えながら被害を量産できるという、組織にとっての合理性がそこにありました。だからこそ「AIルーム」という形で常設されていたのです。
ニセ警察官の典型的な手口の流れとは?
AIが使われる場面を正しく理解するために、ニセ警察詐欺の全体の流れを順に追います。電話、ビデオ通話、送金。三段階で構成されているのが特徴です。
国際電話で「あなたの口座が事件に使われた」と切り出す
最初の接触は電話で来ます。「+」から始まる国際電話番号が表示されることが多いです。名乗りは警察官や検察官、税関職員などさまざまです。
切り出し方は決まっています。「あなたの口座がマネーロンダリングに使われている」「身に覚えのない事件にあなたの名前が出ている」。相手を一気に不安にさせて思考を止めるのが目的です。冷静さを奪うためのフレーズが用意されています。
ビデオ通話に切り替え警察手帳や制服を見せる
電話で揺さぶった後、「正式に確認するため」とビデオ通話への切り替えを求めてきます。LINEやWhatsApp、Telegramなどが使われます。画面には制服姿の人物が現れ、警察手帳らしきものをカメラに近づけます。
ここがAIルームの出番です。顔も声も別人にすり替えられた状態で対応してきます。被害者は本物だと信じてしまい、相手の指示を受け入れる態勢に入ります。
「保全のため」と称して送金やSNSでのやり取りを要求
最後の段階で、お金の話が出てきます。「資金の潔白を証明するために、いったん指定口座に移してほしい」「捜査のためにネットバンキングの画面を共有してほしい」といった要求です。
連絡手段はSNSに移されます。電話番号ではなくLINEのIDで連絡し続けるよう求められます。外部の人間に相談させないための囲い込みです。家族や銀行員に話す機会を奪う設計になっています。
摘発されたカンボジア・ポイペト拠点の全容とは?
事件の規模感を知ると、自分ごととしての切実さが変わってきます。一拠点で何人が動き、どれくらいの規模で運営されていたのか。捜査で見えてきた構造を整理します。
拠点はオフィスビルの一室で防音電話ブース付き
拠点はオフィスビルの一室のような場所でした。広い待機スペースに加え、個別の防音電話ブースが用意されていました。これは声が漏れて他のかけ子の通話と混ざらないようにするためです。
さらに、AIルームの仕切り空間が併設されていました。電話用、ビデオ通話用、AI用の3層構造になっていたわけです。詐欺を業務として回すための「オフィス」として作り込まれていました。
中国人指示役の下に日本人かけ子が約30人前後
拠点では、約8人の中国人が管理役を担っていたとされます。その下で、日本人のかけ子が日本語で被害者に電話をかけていました。日本語の壁を埋めるために日本人が集められた構図です。
かけ子同士は渡航前に互いに面識がなかったと捜査で分かっています。広く全国から集められ、現地では偽名で呼び合っていました。素性を隠したまま犯行に加わる仕組みになっていたのです。
2025年に29人が移送・逮捕されチャーター機で帰国
2025年8月、愛知県警は約80人の捜査員をプノンペンへ派遣しました。10代から50代の日本人29人をチャーター機で日本に移送し、詐欺容疑で逮捕しています。
その後の捜査でAIルームの存在が裏付けられました。摘発と実態解明が同時並行で進んでいる段階です。同種の事件が今後も明らかになる可能性があります。
闇バイトからAIルームに送り込まれるまでの流れとは?
被害者だけの問題ではありません。かけ子になる側も、最初から犯罪を望んでいたとは限らないケースがあります。入口から拠点までの動線を見ておきます。
求人サイトの高額アルバイト募集が入口
大手求人サイトの「海外で働く高収入アルバイト」のような募集が入口になっています。語学不要、未経験可、渡航費負担などの条件が並びます。応募する側は、まさか詐欺だとは思いません。
ある事例では、21歳の男性が2024年12月に応募し、カンボジアへ入国しました。入り口の段階で犯罪と分かる表記は出さないのが、リクルーター側の手口です。怪しさを感じさせない求人文がそろっています。
リクルーターが脅迫を含めて中部空港から渡航させる
応募者が躊躇すると、リクルーター役が押し込んできます。長崎県の容疑者が「金借りとるやつが逃げるのか」などと脅し、中部空港まで連行した事件が把握されています。脅迫まじりの強制的な渡航です。
別の事例では、SNSで知り合った人物に勧められて渡航するパターンもあります。いったん渡航してしまうと、本人の意思では戻れない状況に置かれます。出発前の判断が、その後の運命を分けます。
現地ではパスポートを取り上げられ偽名で監視下に置かれる
拠点に着くと、パスポートを取り上げられます。逃げる手段を奪う典型的なやり方です。偽名で呼び合うルールが課され、外部との連絡も制限されます。
そこで「警察を装って電話をしろ」と指示が出ます。かけ子は被害者でもあり加害者でもある立場に置かれます。帰国後は詐欺容疑で逮捕されるケースが続いています。
ディープフェイクのビデオ通話を見抜く兆候とは?
完璧に見えるAI映像にも、まだ綻びは残っています。怪しいビデオ通話を受けたときに観察したいポイントを並べます。確証ではなく「疑う手がかり」として使ってください。
顔の輪郭や髪の境界が一瞬ぶれる瞬間がある
リアルタイムで顔を差し替えるAIは、動きの激しい瞬間に処理が追いつきません。首を大きく振ったとき、画面に近づいたとき、髪の生え際や顎の輪郭が一瞬ぼやけることがあります。
背景との境目で違和感が出ることもあります。画素の境界が滲んだり、肌の色が一瞬抜けたりする瞬間です。じっと観察していると、不自然な瞬間に気づきやすくなります。
横顔や手で顔を覆う動作で破綻が出やすい
正面の顔は学習データが多く、AIが得意とする角度です。一方で横顔や、手で顔の一部を隠す動作は不得意です。鼻の角度が変だったり、手と顔の前後関係がおかしくなったりします。
「申し訳ありませんが、いったん横を向いて顎を触ってみていただけますか」と頼む方法があります。本物の警察官にこんな失礼な依頼をしても問題は起きないはずです。応じない、あるいは応じても画像が乱れるなら、強く疑う材料になります。
声の抑揚と口の動きが微妙にズレる
音声変換と顔の口元は、別の処理系を通っています。そのため口の動きと声の発音が、わずかにずれることがあります。日本語特有の「ん」や「っ」の処理で違和感が出やすいです。
笑い声や咳など、感情のこもった音も不自然になりがちです。機械的に処理された声には、感情の揺らぎが乗りにくいのです。少し雑談を振ってみると、間や反応のおかしさに気づけることがあります。
本物の警察官は絶対にしないことは?
見抜くために一番強力な武器は、本物の警察の行動原則を知っておくことです。「絶対にしないこと」を覚えておけば、AIで顔を変えられても判別できます。
SNSやビデオ通話でやり取りを継続しない
警察官が捜査でSNSのIDを聞いたり、LINEで連絡を取り合ったりすることはありません。正式な手続きはすべて書面か対面で進みます。ビデオ通話で捜査の打ち合わせをすること自体がありません。
「LINEで本部とつなぎます」「Telegramでこの担当に連絡してください」という流れが出てきたら、その時点で100%詐欺と考えて構いません。例外はないと覚えておいてください。
ネットバンキングで送金を指示することはない
「資金保全のためにこの口座に振り込んでください」「ネットバンキングの画面を共有してください」。こうした依頼は、警察の業務にはありません。資産の差し押さえは法的手続きを経て行われます。
被害者本人にお金を動かさせる方法は、捜査として成立しません。警察がお金の話で指示を出してきたら、必ず偽物です。この一線を家族で共有しておくと、判断を間違えにくくなります。
「逮捕状をビデオで見せる」という対応は存在しない
ニセ警察詐欺では、ビデオ通話で逮捕状や捜査書類を見せてくる演出があります。「あなた宛ての逮捕状が出ている」と画面越しに紙を見せるパターンです。これも実在しません。
逮捕状は本人に面会して提示するのが原則です。画面越しに書類を見せて確認させるという運用はそもそも存在しないのです。書類が映った瞬間に、これは演出だと判断してください。
不審な電話を受けたときに今すぐ取るべき行動とは?
万一おかしな電話が来てしまったときに、その場で取るべき行動を整理します。順番が大事です。落ち着いて一つずつ進めてください。
いったん通話を切り自分から警察署の代表番号にかけ直す
相手が本物の警察官かどうかを確かめる唯一の方法は、自分から公式の番号にかけ直すことです。表示された番号にかけ直すのではありません。必ず自分でインターネットや電話帳から代表番号を調べることが必要です。
詐欺グループは、警察署の番号を偽装表示する技術も持っています。表示された番号は信用できません。手間でも、自分で調べた番号にかけ直す。これが最も確実な見分け方になります。
警察相談専用電話「#9110」に状況を伝える
緊急性の判断がつかないときは、警察相談専用電話の「#9110」が便利です。緊急通報の110番とは別の窓口で、相談ベースで話を聞いてもらえます。
「こういう電話が来たのですが、本物でしょうか」という確認に向いています。録音や着信履歴があれば、それも伝えてください。通報するほどではないかもと迷ったときの相談先として覚えておくと安心です。
家族や近所の人に必ず相談してから判断する
詐欺グループは「他人に話すと捜査の妨害になる」と口止めしてきます。これは囲い込みの手口です。本物の警察が外部相談を禁じることはありません。
通話を切ったら、必ず家族か近所の信頼できる人に話してください。声に出して話すだけで冷静さが戻ることがあります。一人で抱え込まないことが、被害を止める一番の力になります。
高齢の家族にどう伝えれば被害を防げる?
被害者の多くは高齢の方です。離れて暮らす家族として、どう伝えれば効くのか。具体的な伝え方を考えます。
「警察を名乗るビデオ通話は全部詐欺」と一言で共有する
長く複雑な説明は、いざというとき思い出せません。覚えやすい一言に圧縮して伝えるのがコツです。「警察がビデオ通話で連絡してくることはない」。これだけです。
一言を冷蔵庫や電話の横に貼っておく方法もあります。目に入る場所に短い言葉を置くと、いざというときに踏みとどまれます。覚えさせるよりも、思い出させる仕掛けの方が効きます。
国際電話を着信拒否できる設定を一緒に行う
ニセ警察詐欺の電話は、国際電話で来ることが多いです。固定電話・スマートフォンとも、国際電話の着信を拒否する設定があります。携帯各社のサポートに電話すれば、操作を案内してもらえます。
警察庁が推奨する防犯アプリの導入も検討してください。そもそも電話を取らせない環境を作るのが、最強の防御です。本人の判断力に頼らない仕組みを先回りで整えることが、家族にできる最大の援護です。
大阪府警などが公開する啓発動画を一緒に見る
大阪府警が生成AIを使った啓発動画を公開しています。ニセ警察役を生成AIで作り、手口を再現したものです。「こういう感じで来るんだ」と目で見て覚えてもらえます。
文字で伝えるより映像のほうが残ります。親と一緒に並んで動画を見る時間を作ってみてください。話のきっかけにもなり、いざというときの判断材料にもなります。
被害に遭ってしまった場合の相談先と返金可能性とは?
万が一被害に遭ってしまっても、できることがあります。スピード勝負の側面が強いので、知っておくだけで取り戻せる金額が変わります。
最寄りの警察署と銀行に即時連絡し口座凍結を依頼する
振り込んでしまったと気づいたら、まず銀行に連絡して振込先口座の凍結を依頼します。並行して警察に被害届を出してください。凍結が早ければ早いほど、残高が動かされる前に止められる可能性が上がります。
平日昼間でなくても銀行のフリーダイヤルで対応してもらえます。深夜でも翌朝でもなく、気づいた瞬間に連絡するのが鉄則です。後回しにすると、口座から資金が抜かれてしまいます。
振り込め詐欺救済法に基づく被害回復分配金の申請
凍結口座に残った資金は、振り込め詐欺救済法に基づいて被害者に分配される制度があります。預金保険機構が窓口になっています。手続きには期間制限があるので、早めの行動が必要です。
全額が戻るとは限りません。凍結時点の残高を被害者で按分する仕組みだからです。それでも何も動かないより、できる手を全部打つ価値があります。
弁護士会の特殊詐欺被害ホットラインを利用する
各地の弁護士会が、特殊詐欺被害のホットラインを設けているところがあります。返金交渉や民事手続きの相談ができます。法テラスも初期相談の窓口として利用できます。
被害額が大きい場合は、個人で動くより専門家を入れたほうが早いです。弁護士費用を心配する前に、まず相談だけしてみる。多くの窓口は無料相談から始められます。
2026年に被害が過去最悪を更新した背景とは?
なぜ今これほど被害が増えているのか。背景を知ると、社会全体の課題も見えてきます。AIルームの発覚は、その一断面でした。
認知件数が1万件超に達したニセ警察詐欺
2025年の特殊詐欺とSNS型投資・ロマンス詐欺の被害額は、合わせて3241億円超に上ったとされます。過去最悪の更新です。特殊詐欺被害額は前年比695.4億円増の1414.2億円。このうちニセ警察詐欺の認知件数は1万件超、被害額は計985.4億円で、特殊詐欺の約4割と約7割を占めました。
数字の規模からも、ニセ警察詐欺が特殊詐欺の主役になっていることが分かります。AIで信用を補強する手口が増えるほど、被害は拡大する構造です。技術の進化と被害は連動しています。
警察庁が東南アジア各国との連携を強化
詐欺拠点はカンボジア、ミャンマー、中国に集中しています。日本国内の捜査だけでは届きません。警察庁は東南アジア各国の当局と連携を強め、合同摘発を進める方針を示しています。
カンボジア・ポイペトでの29人移送は、その一例です。国境を越えた捜査体制が形になり始めている段階です。ただし拠点は移動するため、終わりは見えていません。
仮装身分捜査など新たな捜査手法の導入
警察庁は、警察官が闇バイトへの応募を装って詐欺グループに潜入する「仮装身分捜査」の導入を進めています。リクルーターや指示役を捕まえるための踏み込んだ手法です。
これに加え、国際電話を遮断する機能を持つ防犯アプリの普及も並行して進められています。捜査と予防の両輪で被害を止めにいく取り組みです。被害者側の備えも、これと連動して強化していく必要があります。
よくある質問(FAQ)
最後に、ここまで触れきれなかった疑問に答えます。読者から多く出る質問を集めました。
AIルームは日本国内にも存在するの?
今回確認されたAIルームは、カンボジア・ミャンマー・中国の海外拠点でのものです。国内での同様の設備は現時点で報道されていません。ただし生成AIは個人のパソコンでも動作するため、国内の小規模グループが類似の手口を取る可能性は否定できません。
警察庁は国内で発生するニセ警察詐欺のうち、AI利用とみられるケースの把握を進めているとされます。海外と国内の区別は、もはや手口の境界線ではなくなりつつあります。
ビデオ通話の録画は証拠として有効?
スマートフォンで通話を録画した動画は、被害届の補強資料として警察に提出できます。AIで加工された顔そのものが本人を特定する証拠にはなりませんが、手口の立証や同種事件との関連付けには役立ちます。
通話中に録画していることを相手に伝える必要はありません。日本では、自分が当事者である通話を記録すること自体に違法性はないとされています。
闇バイトで渡航してしまった家族はどう助ければいい?
まずは現地の日本大使館・領事館に連絡してください。同時に日本の最寄り警察署にも相談します。本人と直接連絡が取れる場合は、SNSの通話履歴ややり取りを保存しておくことが重要です。
帰国した時点で詐欺容疑で逮捕される可能性はあります。それでも犯罪被害者として保護される側面もあるため、早期に弁護士に相談する流れを整えてください。
国際電話の着信拒否はどのキャリアでも可能?
主要キャリアの固定電話・スマートフォンとも、国際電話の着信を拒否する設定や有料・無料のオプションが用意されています。詳細は契約中のキャリアのサポートに問い合わせてください。
設定変更の例として、各社にメッセージを送る場面を想定すると次のような文面が使えます。
件名:国際電話の着信拒否設定のお願い
いつもお世話になっております。
契約中の回線について、国際電話の着信を拒否する設定を行いたく連絡いたしました。
高齢の家族の特殊詐欺対策が目的です。
利用中のプラン名:(プラン名)
契約者名:(氏名)
電話番号:(番号)
手続き方法と費用についてご案内をお願いいたします。
警察を名乗る相手に逮捕状を要求しても意味がない理由は?
ニセ警察官に「逮捕状を見せてください」と言うと、画面越しに書類を見せてきます。AIで作った偽の書類が映るだけで、本物かどうかの判断材料にはなりません。
そもそも逮捕状は本人に面会して提示するものです。画面越しに見せて確認させること自体がない手続きです。書類を要求するより、いったん切って自分で警察に確認するほうが正解です。
まとめ
ニセ警察官を装った海外詐欺拠点で、生成AIが顔と声をすり替える「AIルーム」が使われていました。被害を防ぐ鍵は、AIで作られた映像を見抜くことではなく、本物の警察の行動原則を知っておくことです。SNSで連絡を続けない、お金の指示を出さない、ビデオ通話で書類を見せない。この3つを家族で共有しておけば、画面の中の顔がどんなに本物そっくりでも判断を間違えません。
加えて、国際電話の着信拒否や警察庁推奨の防犯アプリの導入、「#9110」の番号を冷蔵庫に貼っておくといった環境づくりが、いざというときの判断を支えます。最近はLINEの公式アカウントを装って警察を名乗るパターンや、Zoomで「現地警察」を演じるパターンも報告され始めています。同じ手口は形を変えて広がっていきます。今日のうちに家族に電話を1本かけて、この記事の要点を伝えるところから始めてみてください。
参考文献
- 「海外の詐欺拠点の一角に『AIルーム』 ニセ警察官の必須ツールに」- 朝日新聞デジタル(Yahoo!ニュース掲載)
- 「特殊詐欺グループが生成AIを利用して顔など差し替えか カンボジアの拠点で専用の部屋みつかる」- メ〜テレ(名古屋テレビ)
- 「SNS型投資、ロマンス詐欺被害が過去最悪 『ニセ警察』急増、AI活用で手口巧妙化も」- 時事ドットコム
- 「捜査員派遣、29人移送・逮捕へ カンボジア拠点詐欺疑い」- 時事ドットコム
- 「カンボジア特殊詐欺で逮捕の29人 広く全国から集められたか 愛知県警」- 中京テレビNEWS(Yahoo!ニュース掲載)
- 「愛知県の男性(21)の情報で摘発 日本人拘束のカンボジア特殊詐欺拠点」- メ〜テレ
- 「生成AIを使った特殊詐欺被害防止動画を公開中」- 大阪府警察本部