「〇〇法律事務所の者ですが、サイトの未納料金についてご連絡しました」突然こんな連絡が来たら、誰でもドキッとしてしまいますよね。しかし、その相手は本当に弁護士でしょうか。もしかしたら、それは巧妙ななりすまし弁護士の手口かもしれません。
この記事では、あなたの大切な財産を狙う、なりすまし弁護士の悪質な手口を具体的に解説します。そして、誰でも簡単にできる「本物の弁護士かどうかを見分ける方法」と、万が一の時の正しい対処法をお伝えします。正しい知識で、冷静に対応しましょう。
なぜ詐欺師は「弁護士」になりすますの?
数ある職業の中で、なぜ詐欺師は「弁護士」という肩書を好んで使うのでしょうか。その理由を知ることで、彼らの狙いや心理的な罠が見えてきます。まずは、その背景にある3つの理由を理解しましょう。
理由①:「弁護士」という肩書が持つ信頼性を悪用するため
「弁護士」と聞くと、多くの人が「法律の専門家」「正義の味方」「信頼できる人」といったイメージを抱きます。詐欺師は、私たちが無意識に持っているこの社会的な信頼性を悪用します。
弁護士を名乗るだけで、相手は「まさか嘘はつかないだろう」と信じ込みやすくなります。この心理的なハードルの低さが、詐欺師にとっては非常に好都合なのです。
理由②:法律用語で相手を混乱させ、不安を煽るため
「債権」「法的措置」「仮差し押さえ」など、わざと難しい法律用語を並べ立てて、相手を混乱させるのも彼らの常套手段です。普通の人には馴染みのない言葉を使われると、「なんだかよく分からないけど、大変なことになっているようだ」と感じてしまいます。
この情報格差を利用して、相手の不安を最大限に煽り、冷静な判断力を奪うのが狙いです。
理由③:「法的措置」という言葉で恐怖心からお金を払わせてしまうため
「このままでは、裁判になります」「あなたの財産を差し押さえます」といった「法的措置」を匂わせる言葉は、非常に強力な脅し文句です。多くの人は、裁判沙汰になることを極端に恐れます。
その恐怖心から、「お金を払って穏便に済ませたい」という気持ちにさせられてしまうのです。この心理を利用して、詐欺師は不当なお金を支払わせようとします。
なりすまし弁護士は、どんな手口であなたを狙うの?
なりすまし弁護士の手口は、一つではありません。彼らは、あなたの状況に合わせて、様々なシナリオを用意して近づいてきます。ここでは、特に被害が多い代表的な3つの手口を紹介します。
手口①:架空請求型(「サイト利用料が未払いです」)
これは、最も古典的で多い手口です。ある日突然、法律事務所を名乗る相手からハガキやメール、電話などで「あなたが利用したサイトの料金が未払いです。支払わなければ法的措置を取ります」と連絡が来ます。
身に覚えがないため最初は無視していても、何度も連絡が来るうちに不安になり、連絡してしまうと「示談金」「遅延損害金」などの名目でお金を請求されます。
手口②:示談金詐欺型(「交通事故の示談金が必要です」)
これは、オレオレ詐欺の変形パターンです。あなたの息子や孫を名乗る人物から「交通事故を起こしてしまった。相手と示談するために、弁護士の先生にお金をすぐに払わないといけない」と電話がかかってきます。
その後、電話を代わった「弁護士」を名乗る男から、示談金の振込を指示されます。家族の危機を告げられて動揺しているため、言われるがままに振り込んでしまうケースが後を絶ちません。
手口③:被害回復型(「詐欺で失ったお金を取り戻します」)
これは、過去に投資詐欺などの被害に遭った人を狙う、非常に悪質な二次被害の手口です。詐欺グループは、被害者の名簿を共有しています。その名簿を元に、「〇〇詐欺の被害金を取り戻す活動をしています」と、弁護士を名乗って電話やDMで接触してきます。
そして、「着手金」「手数料」といった名目で、さらにお金をだまし取ろうとします。「被害金を取り戻したい」という藁にもすがる思いを利用した、卑劣な手口です。
なぜ、なりすまし弁護士を信じてしまうの?
「自分なら、そんな話には騙されない」と思うかもしれません。しかし、いざ当事者になると、多くの人が冷静さを失い、相手の言葉を信じてしまいます。そこには、詐欺師が巧みに仕掛ける3つの心理的な罠があります。
心理①:突然の連絡に動揺し、冷静な判断ができなくなる
「裁判」「差し押さえ」といった非日常的な言葉を突然突きつけられると、誰でもパニックに陥ります。人は、強いストレスや不安を感じると、物事を論理的に考える能力が著しく低下します。
詐欺師は、この人間の性質を熟知しています。あえて衝撃的な言葉を使うことで、あなたから冷静さを奪い、自分のペースに引き込もうとするのです。
心理②:「専門家が言うことだから」と疑わずに信じてしまう
私たちは、医者や警察官、そして弁護士といった「専門家」の言うことを、無条件に信じてしまいがちです。これを心理学では「権威への服従原理」と呼びます。
「法律の専門家である弁護士が言うのだから、間違いないだろう」という思い込みが、相手の言葉を疑うという、ごく当たり前の警戒心を麻痺させてしまうのです。
心理③:過去の被害を取り戻したいという気持ちが強い
特に、被害回復型の詐欺に遭う人は、「失ったお金を、少しでもいいから取り戻したい」という強い願望を持っています。その切実な気持ちが、「もしかしたら、この人なら助けてくれるかもしれない」という希望的観測に繋がり、相手を信じ込ませる原因になります。
詐欺師は、あなたの「最後の望み」に巧みにつけ込んできます。
最も重要!本物の弁護士か、どうやって確認すればいいの?
「この弁護士、本物かな?」そう感じた時に、誰でも、無料で、そして確実に本物かどうかを確認する方法があります。難しいことはありません。以下の3つの方法を覚えておけば、なりすまし弁護士に騙されることはありません。
確認方法①:日本弁護士連合会(日弁連)のサイトで名前を検索する
これが、最も確実で、最も重要な確認方法です。日本で活動する本物の弁護士は、全員が「日本弁護士連合会(日弁連)」に登録されています。
相手が名乗った弁護士の名前を、日弁連のウェブサイトにある「弁護士情報検索」ページで検索してみてください。名前が出てこなければ、その人物は100%偽物です。名前が出てきた場合も、次に紹介する方法で本人確認をしましょう。
確認方法②:相手の事務所の電話番号を調べ、かけ直す
日弁連のサイトで名前が見つかったら、そこに登録されている法律事務所の電話番号も確認できます。一度電話を切り、相手からかかってきた番号ではなく、必ず自分で調べた事務所の代表電話番号にかけ直してください。そして、「〇〇弁護士をお願いします」と伝えてみましょう。詐欺の場合、本人につながることはありません。
確認方法③:弁護士バッジ(徽章)の番号を聞いてみる
本物の弁護士は、ひまわりの花の中央に天秤がデザインされた「弁護士バッジ(徽章)」を必ず持っています。このバッジには、一人ひとり固有の登録番号が刻印されています。
電話口で「失礼ですが、先生の登録番号を教えていただけますか?」と尋ねてみるのも有効です。偽物の弁護士は、この質問に答えることができません。
本物の弁護士なら言わない・しないこととは?
本物の弁護士の行動には、弁護士法や弁護士職務規程といった、厳しいルールがあります。そのルールを知っておけば、「本物の弁護士なら、こんなことはしないはずだ」と、詐欺を見抜くことができます。
行動①:電話やメールでいきなり高額な金銭を要求する
本物の弁護士が、正式な依頼(委任契約)も結んでいない相手に、電話やメール一本で、いきなり「〇〇万円を至急振り込んでください」などと要求することは絶対にありません。必ず、面談や契約手続きを踏んだ上で、費用について丁寧に説明します。
行動②:コンビニで電子マネーを買うよう指示する
弁護士費用や示談金の支払いを、コンビニで売っている電子マネー(ギフトカード)で要求することは、100%あり得ません。これは、詐欺師がお金の足跡を残さずにだまし取るための典型的な手口です。「カードを買って番号を教えて」と言われたら、その瞬間に詐欺だと断定してください。
行動③:相談もなく、一方的に「受任した」と連絡してくる
本物の弁護士は、あなたが相談し、依頼して、初めてあなたの代理人(弁護人)になります。あなたが何も依頼していないのに、一方的に「あなたの代理人になりました」「〇〇の件、受任しました」などと連絡してくることは、絶対にありません。
もし、なりすまし弁護士の被害に遭ってしまったら?
万が一、お金を支払ってしまった後に「詐欺かもしれない」と気づいた場合。絶対に一人で抱え込まず、すぐに以下の専門機関に相談してください。行動が早いほど、解決の可能性が高まります。
相談先①:最寄りの警察署または警察相談専用電話「#9110」
詐欺は、立派な犯罪です。気づいた時点ですぐに、最寄りの警察署に被害届を提出してください。どこに相談すればいいか分からない場合は、警察相談専用電話「#9110」に電話すれば、適切な窓口を案内してくれます。
相談先②:地域の弁護士会
各都道府県には、必ず「弁護士会」という組織があります。「なりすまし弁護士の被害に遭ったかもしれない」と伝えれば、専門の窓口で相談に乗ってくれます。また、本物の弁護士を探す手伝いもしてくれます。
相談先③:法テラス(日本司法支援センター)
「弁護士に相談したいけど、費用が心配…」そんな時に頼りになるのが、国が設立した「法テラス」です。収入などの条件を満たせば、無料で法律相談を受けられたり、弁護士費用の立て替え制度を利用できたりします。
なりすまし弁護士について、よくある質問
最後に、なりすまし弁護士に関してよく寄せられる質問とその答えをまとめました。いざという時に備えて、正しい知識を身につけておきましょう。
Q1. 弁護士を名乗るメールやSMSは本物?
ほぼ100%偽物だと考えてください。本物の弁護士が、初対面の相手に、いきなりショートメッセージで重要な連絡を送ることは、まずあり得ません。記載されているURLや電話番号には、絶対にアクセスしたり連絡したりしないでください。
Q2. 弁護士登録番号が本物か調べる方法は?
弁護士が名乗った登録番号が本物かどうかを、私たちが直接調べることは難しいです。一番確実なのは、やはり日弁連の「弁護士情報検索」で名前と事務所を調べ、その事務所の正規の電話番号にかけ直して本人を確認するという方法です。
Q3. 弁護士ではない人が法律相談に乗るのは違法(非弁行為)?
はい、違法です。弁護士の資格がない人が、報酬を得る目的で、具体的な法律トラブルの相談に乗ったり、示談交渉を代行したりすることは、弁護士法で禁止されている「非弁行為」にあたります。なりすまし弁護士の行為は、詐欺罪だけでなく、この弁護士法違反にも該当します。
Q4. 支払ってしまったお金は取り返せる?
非常に困難ですが、可能性はゼロではありません。「振り込め詐欺救済法」という法律に基づき、犯人の口座を凍結し、お金が残っていれば被害者に返還される制度があります。諦めずに、一刻も早く警察と金融機関に連絡することが大切です。
Q5. 家族が騙されているような場合はどうすればいい?
本人は「本物の弁護士とやり取りしている」と信じ込んでいるため、頭ごなしに否定するのは逆効果になることがあります。まずは本人の話をじっくり聞き、この記事で紹介したような「日弁連のサイトで確認する」といった客観的な事実確認の方法を、一緒に試してみるのが良いでしょう。
まとめ
「弁護士」という肩書は、私たちに安心感と信頼感を与えます。しかし、その心理を逆手に取るのが、なりすまし弁護士の巧妙な手口です。彼らは、法律という鎧をまとった、ただの詐欺師に他なりません。突然の連絡に動揺せず、「まずは確認する」という冷静なワンクッションを置くことが、あなた自身を守る最大の武器になります。
この記事で紹介した「日弁連のサイトで検索する」という方法は、誰でも、いつでも、無料で行える最も確実な防御策です。もし、あなたやあなたの大切な人のもとに、弁護士を名乗る怪しい連絡が来たら、今日の記事を思い出してください。そして、慌てず、騒がず、まずは検索することから始めてみましょう。
参考文献リスト
- 「弁護士や法律事務所を名乗る詐欺的な請求や広告にご注意ください」 – 日本弁護士連合会
- 「弁護士を名乗る者からの詐欺的な電話にご注意ください」 – 第二東京弁護士会
- 「弁護士や検察官などを名乗る不審な電話やメールにご注意ください」 – 法務省
- 「架空請求」 – 警察庁