「オレオレ詐欺」という言葉は誰もが知っていますが、今や特殊詐欺の手口はそれだけではありません。警察官や市役所の職員を名乗ったり、SNSで有名人になりすましたりと、その種類は増え続け、より巧妙になっています。この特殊詐欺の種類一覧を知っておくことは、もはや他人事ではありません。
この記事では、警察庁が分類する代表的な手口から、インターネットを利用した最新の傾向まで、特殊詐欺の種類一覧を分かりやすく解説します。あなたとあなたの大切な家族を悪質な犯罪から守るために、ぜひ最後までお読みください。
特殊詐欺とは?その基本的な定義と分類
特殊詐欺は、私たちの親切心や不安な気持ちに付け込む、非常に悪質な犯罪です。犯人は姿を見せず、電話やメールといったツールだけで巧みに私たちを騙そうとします。まずは、その基本的な定義を理解しておきましょう。
1. 被害者を信じ込ませて金銭をだまし取る犯罪の総称
特殊詐欺とは、犯人が電話やハガキ、メールなどを使って、対面することなく被害者を信じ込ませ、お金を振り込ませたり、キャッシュカードをだまし取ったりする犯罪の総称です。不特定多数の人をターゲットにするのが特徴です。
犯人は、様々な役柄になりすまして、言葉巧みに私たちの心を操ろうとします。その手口は年々巧妙になっており、誰もが被害に遭う可能性があります。
2. なぜ被害者の多くが高齢者なのか
特殊詐欺の被害者の多くは、残念ながら高齢者の方々です。警察の統計によると、被害者の8割以上が65歳以上で占められています。これには、日中に自宅にいることが多く、電話に出やすいといった生活スタイルの理由が挙げられます。
また、家族を想う気持ちが強く、「息子や孫が困っているなら助けたい」という親心に付け込まれやすい傾向もあります。さらに、社会との接点が少なくなり、相談相手が身近にいないという孤立感も、犯人にとっては好都合なのです。
3. 警察庁が定める特殊詐欺の10類型
手口の多様化に対応するため、警察庁では特殊詐欺を以下の10の類型に分類しています。この分類を知ることで、自分が遭遇した手口がどの種類に当てはまるのかを理解しやすくなります。
| 分類 | 主な手口 |
|---|---|
| オレオレ詐欺 | 親族になりすまし、金銭を要求する |
| 預貯金詐欺 | 警察官などを名乗り、キャッシュカードをだまし取る |
| 架空料金請求詐欺 | 未払い料金があるなどと偽り、金銭を要求する |
| 還付金詐欺 | 還付金があると偽り、ATMを操作させる |
| 融資保証金詐欺 | 融資をちらつかせ、保証金をだまし取る |
| 金融商品詐欺 | 未公開株などの嘘の儲け話で金銭をだまし取る |
| ギャンブル詐欺 | ギャンブルの必勝情報料などをだまし取る |
| 交際あっせん詐欺 | 異性の紹介料などをだまし取る |
| その他の特殊詐欺 | 上記に分類されない特殊詐欺 |
| キャッシュカード詐欺盗 | キャッシュカードをすり替えて盗む |
【種類一覧①】親族や公的機関を装う代表的な手口
特殊詐欺の中でも、特に被害件数が多いのが、私たちの身近な存在や信頼できるはずの公的機関を名乗る手口です。相手を信用してしまいやすい心理を巧みに利用した、代表的な詐欺の種類を見ていきましょう。
1. オレオレ詐欺|息子や孫になりすまし金銭を要求
「オレオレ」という言葉で知られる、特殊詐欺の原点ともいえる手口です。息子や孫、親族になりすまして電話をかけ、「会社のお金を使い込んでしまった」「交通事故を起こして示談金が必要だ」などと、緊急事態を装ってお金を要求します。
「風邪をひいて声がおかしい」などと言い訳をしたり、複数の犯人が上司や弁護士役で登場したりと、劇場型で信じ込ませようとするのが特徴です。家族を心配する気持ちに付け込む、非常に悪質な手口です。
2. 預貯金詐欺|「あなたの口座が危険」と偽りカードをだまし取る
警察官や銀行協会の職員、デパートの店員などを名乗って電話をかけてくる手口です。「あなたのキャッシュカードが不正に利用されています」「口座から不正に現金が引き出されています」などと嘘をつき、被害者の不安を煽ります。
そして、「カードを新しく作り直す必要がある」などと言って自宅を訪問し、言葉巧みにキャッシュカードをだまし取ります。その際に暗証番号も聞き出し、現金を引き出してしまうのです。
3. キャッシュカード詐欺盗|封筒で巧みにカードをすり替えて盗む
預貯金詐欺と似ていますが、こちらは「だまし取る」のではなく「盗む」という点が異なります。警察官などを名乗る犯人が自宅を訪れ、「カードが犯罪に使われているので、使えないように手続きをする」と言って、被害者にキャッシュカードを封筒に入れさせます。
そして、「封印のために印鑑を持ってきてください」などと被害者をその場から離れさせ、目を離した隙に、あらかじめ用意していた偽のカードが入った別の封筒とすり替えて盗み出します。
【種類一覧②】金銭の支払いや還付を口実にする手口
お金が「戻ってくる」、あるいは「支払わなければ大変なことになる」と思わせて、被害者を巧みに操るのがこのタイプの手口です。特に、ATMへ誘導する還付金詐欺は、被害が後を絶ちません。
1. 架空料金請求詐欺|「サイトの未払い料金がある」と脅す
「有料サイトの利用料金が未納です」「このままでは裁判になります」といった内容のメールやハガキ、SMSを送りつけ、架空の料金を請求する手口です。身に覚えがなくても、「もしかしたら」という不安な気持ちにさせて連絡させようとします。
連絡してしまうと、弁護士などを名乗る別の犯人が登場し、「今日中に支払わないと大変なことになる」と脅して、コンビニで電子マネーを買わせたり、指定の口座に振り込ませたりします。
2. 還付金詐欺|「医療費が戻る」と信じさせATMへ誘導する
市役所や税務署、年金事務所の職員などを名乗って電話をかけ、「医療費の還付金(払いすぎたお金)があります」「手続きの締め切りが今日までです」などと、甘い言葉で被害者を急かします。そして、還付金を受け取る手続きと偽って、スーパーやコンビニのATMに誘導します。
ATMに着くと、電話で巧みに指示を出し、被害者が気づかないうちに、還付金を受け取るのではなく、犯人の口座にお金を振り込むように操作させてしまいます。
3. 融資保証金詐欺|「融資の前に保証金が必要」と持ちかける
実際には融資するつもりがないにもかかわらず、融資するような内容の文書を送るなどして、お金に困っている人を誘い込む手口です。融資を申し込んできた人に対して、「融資をするには、まず保証金が必要です」「信用情報を確認するために手数料を振り込んでください」などと言って、お金をだまし取ります。
お金を振り込んでも、もちろん融資は実行されず、その後、犯人とは連絡が取れなくなってしまいます。
【種類一覧③】儲け話や欲望に付け込む手口
「必ず儲かる」「簡単に稼げる」といった、人の射幸心や欲望に付け込むタイプの手口です。ありえないほどの好条件を提示して、被害者を罠にかけようとします。
1. 金融商品詐欺|「必ず儲かる未公開株がある」と勧誘する
実際には価値のない未公開株や社債、外国通貨などについて、「絶対に値上がりします」「あなただけに紹介する特別な情報です」などと言って、購入を勧めてくる手口です。
複数の会社が別々に電話をかけてきて、「A社が販売している株を、後でB社が高く買い取ります」などと、劇場型の芝居で信用させようとするケースもあります。
2. ギャンブル詐欺|「パチンコの打ち子募集」などを口実にする
パチンコや競馬といったギャンブルに関する嘘の情報を提供し、金銭をだまし取る手口です。「絶対に当たるロト6の番号を教えます」「パチンコの打ち子になれば高収入」などと勧誘し、情報料や登録料といった名目でお金を要求します。
もちろん、提供される情報に価値はなく、お金を払っても儲かることはありません。
3. 交際あっせん詐欺|異性の紹介をほのめかし登録料を要求する
雑誌やメールなどで「女性を紹介します」などと広告を出し、連絡してきた男性に対して、会員登録料や紹介料、保証金といった様々な名目でお金をだまし取る手口です。
お金を払っても、実際には異性を紹介されることはありません。「文字化けを解除するためにポイントが必要です」などと、次々に追加の支払いを要求してくるのが特徴です。
【最新の傾向】インターネットやSNSを利用した新しい手口
特殊詐欺の手口は、時代の変化とともに進化しています。近年では、スマートフォンやSNSの普及に伴い、インターネットを悪用した新しいタイプの詐欺が急増しており、若者も被害に遭うケースが増えています。
1. SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺|有名人なりすましや恋愛感情を利用
FacebookやInstagramなどで、有名な投資家や実業家になりすました広告を出し、LINEグループに誘導して投資を勧め、お金をだまし取る手口です。また、SNSやマッチングアプリで知り合い、恋愛感情を抱かせた上で、「2人の将来のために投資しよう」などと言ってお金をだまし取るロマンス詐欺も増えています。
どちらも、被害額が数千万円にのぼるなど、非常に高額化する傾向があります。
2. サポート詐欺|パソコン画面に偽の警告を表示し不安を煽る
パソコンでインターネットを閲覧中に、突然「ウイルスに感染しました」といった偽の警告画面と警告音を表示させ、利用者の不安を煽る手口です。画面に表示された偽のサポート窓口に電話をかけると、片言の日本語を話すオペレーターが、遠隔操作ソフトをインストールさせようとします。
そして、「ウイルスを除去するためにサポート契約が必要です」などと言って、数万円の電子マネーを購入させ、その番号をだまし取ります。
3. フィッシング詐欺|宅配業者などを装い個人情報を盗み取る
宅配業者や金融機関、通信会社などを装ったSMSやメールを送りつけ、本物そっくりの偽サイトに誘導する手口です。偽サイトでIDやパスワード、クレジットカード番号、暗証番号などを入力させて、個人情報を盗み取ります。
盗み取られた個人情報は、ネットバンキングの不正送金や、キャッシュレス決済の不正利用など、さらなる犯罪に悪用されてしまいます。
なぜ特殊詐欺に騙されてしまうのか?犯人が使う心理術
「自分は絶対に騙されない」と思っていても、いざ当事者になると、冷静な判断ができなくなってしまうことがあります。犯人は、私たちをパニックに陥らせるための、様々な心理的なテクニックを使ってきます。
1. 緊急性を演出し、冷静に考える時間を与えない
「今すぐお金を振り込まないと大変なことになる」「手続きの締め切りは今日までです」など、犯人は必ずと言っていいほど、被害者を急かしてきます。これは、私たちに冷静に考えたり、誰かに相談したりする時間を与えないための常套手段です。
焦ってしまうと、普段なら気づくはずの「おかしな点」を見過ごしてしまいます。
2. 警察官や弁護士といった権威を利用して信じ込ませる
人は、警察官や弁護士、市役所の職員といった、権威のある立場の人から言われたことを信じやすい傾向があります。犯人はその心理を悪用し、もっともらしい肩書を名乗ることで、話の信憑性を高めようとします。
公的機関を名乗られると、「疑ってはいけない」という気持ちが働き、相手の言うことを鵜呑みにしてしまいがちです。
3. 「自分だけは大丈夫」という正常性バイアス
多くの人が、詐欺のニュースを見ても「自分は大丈夫」「騙されるのは一部の人だけ」と考えがちです。このような、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりする心の働きを「正常性バイアス」と呼びます。
この思い込みが、いざという時の警戒心を解いてしまいます。「もしかしたら自分も被害に遭うかもしれない」と考えることが、詐欺を防ぐ第一歩です。
すべての特殊詐欺に共通する基本的な対策とは
特殊詐欺の手口は様々ですが、その被害を防ぐための基本的な対策には共通点があります。日頃から少し意識するだけで、詐欺に遭うリスクを大きく減らすことができます。
1. 在宅中でも留守番電話に設定し、相手を確認してから話す
最も簡単で効果的な対策の一つが、自宅の電話を常に留守番電話に設定しておくことです。犯人は、自分の声を録音されることを嫌うため、留守番電話だとわかると、メッセージを残さずに電話を切ることがほとんどです。
本当に用事のある相手であれば、必ずメッセージを残してくれるはずです。相手を確認してから、こちらからかけ直すようにすれば、不要なトラブルを避けることができます。
2. 電話やメールでお金やキャッシュカードの話が出たら詐欺を疑う
「電話やメールで、お金やキャッシュカードの話が出たら、すべて詐欺」。このことを、家族全員の合言葉にしてください。警察官や市役所の職員が、電話で口座番号を聞いたり、キャッシュカードを預かりに行ったりすることは絶対にありません。
どんなに巧妙なことを言われても、お金に関する話が出た時点で、すぐに電話を切り、誰かに相談することが重要です。
3. 家族の間で合言葉を決めておく
オレオレ詐欺の対策として、家族の間だけで通じる「合言葉」を決めておくのも有効です。例えば、ペットの名前や、子供の頃の思い出の場所など、他人には分からない質問を用意しておきます。
息子や孫を名乗る電話がかかってきた時に、「うちの合言葉は?」と尋ねることで、相手が本人かどうかを確認することができます。
もし不審な連絡が来たら?すぐに相談できる窓口
「これって詐欺かも?」と少しでも感じたら、一人で悩んだり、判断したりするのは非常に危険です。すぐに相談できる窓口を知っておくことで、いざという時に落ち着いて行動できます。
1. 犯罪被害の未然防止のための警察相談専用電話「#9110」
緊急の事件や事故ではないけれど、警察に相談したいことがある場合は、「#9110」に電話してください。これは、全国共通の警察相談専用電話で、専門の相談員が話を聞き、適切なアドバイスをしてくれます。
「こんな電話があったけど、どうしたらいいか」といった、被害に遭う前の段階での相談に、親身に対応してくれます。
2. 商品やサービスの契約トラブルも相談できる消費者ホットライン「188」
架空料金請求詐欺や金融商品詐欺など、商品やサービスの契約に関するトラブルは、「188(いやや!)」に電話しましょう。これは、全国の消費生活センターなどにつながる消費者ホットラインです。
専門の相談員が、トラブル解決のための助言や、あっせんを行ってくれる場合があります。どこに相談して良いか分からない時に、まず頼りになる窓口です。
3. 一人で判断せず、まずは家族や身近な人に話す
最も大切なことは、一人で抱え込まないことです。不審な電話やメールが来たら、すぐに電話を切り、家族や友人、近所の人など、信頼できる誰かにその内容を話してください。
第三者に話すことで、客観的な視点からアドバイスをもらうことができ、冷静さを取り戻すことができます。「ちょっと変な電話があったんだけど」と話す勇気が、あなたを被害から守ります。
まとめ
特殊詐欺の手口は、これからも私たちの心の隙を狙って、形を変えながら増え続けるでしょう。すべての手口を完璧に覚えることは難しいかもしれませんが、基本的な対策の原則は変わりません。それは、「慌てない、信じない、すぐに相談する」ということです。
この記事で紹介した特殊詐欺の種類一覧を参考に、ぜひご家族や身近な人と、「こんな手口があるんだって」「もしこんな電話が来たらどうする?」と話し合ってみてください。日頃からのコミュニケーションと、ほんの少しの警戒心が、あなたとあなたの大切な人の未来を守る、何よりの力になります。