友人や家族にお金を貸すとき、契約書を作るべきか迷いますよね。口約束でも貸し借りは成立します。ただ、証拠がなければ「もらった」と言われて終わりです。個人間融資の契約書は、貸主と借主の両方を守る唯一の盾になります。
この記事では、個人間融資の契約書に書くべき必須8項目を順番に解説します。利息の上限、収入印紙、公正証書の使い方もまとめました。あわせて、SNSで広がる危険な「個人間融資」の見極め方にも触れます。これから貸す人も、借りる人も、署名する前に読んでください。
個人間融資の契約書とは?借用書との違い
最初に言葉を整理します。契約書と借用書は何が違うのか。どちらを作ればいいのか。ここが曖昧なまま書き始めると、あとで効力に差が出ます。基本の考え方から見ていきましょう。
金銭消費貸借契約書とは何か
お金の貸し借りを証明する正式な書類が、金銭消費貸借契約書です。民法587条に定められた「消費貸借契約」を書面にしたものを指します。貸した事実、金額、返済の約束をひとまとめに記録します。
ポイントは「契約は口頭でも成立する」という点です。では、なぜ書面が必要なのでしょうか。答えは証明のためです。契約書がなければ、裁判で貸した事実を立証するのが極めて難しくなります。書面は契約の成立条件ではなく、回収の生命線なのです。
借用書と契約書はどちらを作るべきか
借用書は、借主だけが署名して貸主に差し入れる書類です。一方、金銭消費貸借契約書は貸主と借主の双方が署名します。作成の手間は借用書のほうが軽いです。
ただし、証拠としての安定感は契約書が上です。双方が署名し、1通ずつ保管するため「偽造された」という反論を受けにくいからです。目安として、数万円なら借用書、数十万円を超えるなら契約書と考えてください。金額が大きいほど、双方署名型を選ぶのが安全です。
口約束だけの貸し借りが危険な理由とは?
口約束の最大の弱点は、言った言わないの水掛け論です。「あれは贈与だった」と主張されたら、貸主は反論の材料を失います。返済期限や利息の認識がズレていても、確かめる手段がありません。
もう1つ、見落とされがちなリスクがあります。税金です。貸し借りの記録がないと、税務署から贈与とみなされ、贈与税が課される可能性があります。年間110万円を超える金銭の移動は、書面と返済実績で「貸付」だと示せるようにしておきましょう。
個人間融資の契約書に書くべき8つの必須項目
ここからが本題です。契約書には、抜けてはいけない項目が8つあります。1つでも欠けると、いざというとき効力を争われかねません。チェックリストのつもりで、上から順に確認してください。
1.契約書の作成日付
日付は契約の起点です。いつ合意したのかを特定する基準になります。和暦でも西暦でも構いませんが、年・月・日まで正確に書いてください。
日付が重要な理由はもう1つあります。消滅時効の計算に関わるからです。2020年4月1日の民法改正をまたぐと、適用されるルールが変わります。空欄や「吉日」といった曖昧な表記は避けましょう。
2.貸主・借主の氏名と住所
当事者が誰なのかを特定する項目です。氏名は戸籍どおりの正式名称で書きます。ニックネームやSNSのアカウント名では、相手を特定できません。
住所は住民票の記載と一致させてください。相手の本人確認書類と契約書の記載を必ず照合することが大切です。運転免許証やマイナンバーカードを見せてもらい、氏名と住所を確かめてから署名に進みましょう。
3.貸し借りした金額
金額は契約の核心です。「金500,000円」のように、円単位まで明確に書きます。改ざんを防ぐため、金額の前に「金」、後ろに「也」を付ける書き方が実務では定着しています。
数字の前後に余白を作らないことも大事です。「金 50,000円」と空白があると、数字を書き足される余地が生まれます。手書きの場合は特に詰めて書いてください。
4.金銭を受け渡した日付
消費貸借契約は、原則としてお金を受け取って初めて成立します。だから「いつ渡したか」の記録が欠かせません。契約書の作成日と受け渡し日が違う場合は、両方を書き分けます。
おすすめは銀行振込です。振込記録が残れば、受け渡しの日付と金額を客観的に証明できます。手渡しを選ぶなら、受領のサインを契約書か領収書に残してもらいましょう。
5.返済期日と返済方法
「いつまでに」「どうやって」返すのかを定めます。一括払いか、分割払いか。分割なら毎月の金額と支払日を明記します。回数が多い場合は、返済予定表を別紙として添付すると整理しやすいです。
返済方法は振込口座まで指定してください。「毎月末日限り、下記口座へ振り込む」と書けば、支払いの証拠が自動的に残ります。現金手渡しの返済は記録が残りにくいため、できるだけ避けたいところです。
6.利息の有無と利率
個人間の貸し借りは、原則として無利息です。民法では、利息の合意がなければ貸主は利息を請求できません。利息を取りたいなら、契約書に利率まで明記する必要があります。
逆に、無利息で貸す場合も「無利息とする」と書いておくと安心です。利息の記載漏れは「請求できるはずの利息を失う」原因の代表例です。利率の上限は後の章で詳しく説明します。
7.遅延損害金の定め
返済が遅れたときのペナルティが遅延損害金です。記載がなくても法定利率で請求はできます。ただ、契約書に定めておけば、上限の範囲で高めの率を設定できます。
遅延損害金には心理的な効果もあります。「遅れると負担が増える」と分かっていれば、借主は期日を守ろうとします。利息制限法上、上限利率の1.46倍までが有効と扱われる点も覚えておきましょう。
8.双方の署名・押印
最後は署名と押印です。署名は必ず本人の自筆にしてください。パソコンで氏名を印字しただけでは、本人の意思を示す力が弱くなります。
印鑑は認印でも有効です。ただし、高額の貸し借りでは実印と印鑑証明書の組み合わせが安心です。自筆の署名と実印がそろえば、契約書の証明力は格段に高まります。契約書は2通作り、双方が1通ずつ原本を保管してください。
実際の条文は、次のような書き方になります。
金銭消費貸借契約書
貸主 山田太郎(以下「甲」という)と借主 佐藤一郎(以下「乙」という)は、次のとおり金銭消費貸借契約を締結した。
第1条 甲は乙に対し、金300,000円を貸し付け、乙はこれを受領した。
第2条 乙は甲に対し、前条の借入金を2026年12月25日限り、甲の指定する銀行口座への振込により一括して返済する。
第3条 利息は年10%とし、元金とあわせて支払う。
第4条 乙が返済を遅延したときは、年14.6%の遅延損害金を支払う。
2026年6月11日
甲(貸主)住所・氏名・押印
乙(借主)住所・氏名・押印
契約書に定める利息はいくらまで?利息制限法のルール
利息は自由に決められるわけではありません。法律で上限が決まっています。知らずに高い利率を書くと、その部分は無効です。場合によっては刑事罰の対象にもなります。ルールを正確に押さえましょう。
金額別に決まる上限金利
上限を定めているのは利息制限法です。元本の金額によって、3段階に分かれています。
| 元本の金額 | 上限金利(年) |
|---|---|
| 10万円未満 | 20% |
| 10万円以上100万円未満 | 18% |
| 100万円以上 | 15% |
たとえば50万円を貸すなら、上限は年18%です。契約書に利率を書くときは、必ずこの表と照らし合わせてください。元本がどの区分に入るかで、書ける数字が変わります。
上限を超えた利息部分はどうなるのか
上限を超える利息を定めても、超えた部分は無効です。借主はその部分を支払う義務がありません。すでに払い過ぎていた場合は、元本への充当や返還請求の対象になります。
さらに重い線引きもあります。出資法では、個人間の貸付で年109.5%を超える利息を取ると刑事罰の対象になります。5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金です。契約書に書いてあっても、違法な利息は守られません。
利息の記載がない場合は無利息になる
個人間の貸し借りでは、利息は「書いた者勝ち」ではなく「書かなければゼロ」です。民法上、利息の合意がない貸付は無利息と扱われます。あとから「利息も払ってよ」と言っても通りません。
これは貸主にとって意外な落とし穴です。利息を取るつもりなら、契約時に利率まで合意し、契約書に明記する。この1行を忘れるだけで、受け取れたはずの利息が消えます。
個人間融資の契約書に収入印紙は必要?
契約書を作ったら、次は収入印紙の確認です。個人間の貸し借りでも、印紙税の対象になります。貼り忘れにはペナルティもあります。金額の目安と例外を整理しておきましょう。
金額別の印紙税額の目安
金銭消費貸借契約書は、印紙税法上の課税文書です。貸付金額に応じて、次の収入印紙を貼ります。
| 契約金額 | 印紙税額 |
|---|---|
| 1万円未満 | 非課税 |
| 10万円以下 | 200円 |
| 10万円超50万円以下 | 400円 |
| 50万円超100万円以下 | 1,000円 |
| 100万円超500万円以下 | 2,000円 |
印紙は契約書の原本ごとに必要です。2通作成するなら、2通それぞれに貼付します。貼ったあとは、印鑑で消印するのを忘れないでください。
印紙を貼らなかった場合の過怠税とは?
印紙を貼り忘れても、契約自体は無効になりません。印紙税は国に納める税金であり、契約の効力とは別の話だからです。ここを混同している人は多いです。
ただし、無傷では済みません。貼付漏れが発覚すると、本来の印紙税額の3倍に相当する過怠税を課されます。1,000円の印紙を惜しんで3,000円払う羽目になるわけです。作成時に貼っておくのが一番安上がりです。
電子契約なら収入印紙が不要になる理由
印紙税の対象は、紙の「文書」です。電子データで作成・締結した契約書は課税文書に当たりません。つまり、電子契約なら印紙代はゼロです。
個人間でも電子契約サービスは利用できます。2020年4月施行の改正民法で、書面による諾成的消費貸借が認められ、電磁的記録も書面とみなされるようになりました。遠方の相手と契約する場合や、印紙代を節約したい場合の選択肢になります。
契約書の法的効力を高める方法とは?
契約書を作っても、相手が払わなければ意味がない。そう感じる人もいるはずです。実は、回収力を一段引き上げる仕組みがあります。公正証書と連帯保証人です。順に見ていきます。
執行認諾文言付き公正証書にするメリット
公正証書は、公証人が作成する公文書です。ここに「支払いを怠ったときは直ちに強制執行に服する」という執行認諾文言を入れておきます。すると、効果が劇的に変わります。
通常、強制執行には裁判の勝訴判決が必要です。ところが、執行認諾文言付き公正証書があれば、裁判をせずに相手の給与や預金を差し押さえられます。高額の貸付や、返済に不安がある相手との契約では、検討する価値が十分にあります。
公正証書の作成手順と手数料の目安
作成の流れはシンプルです。最寄りの公証役場に連絡し、日時を予約します。当日は貸主と借主がそろって出向くのが原則です。本人確認書類、印鑑、契約内容のメモを持参してください。
手数料は貸付額に応じて決まります。50万円以下なら3,000円、100万円以下なら5,000円、200万円以下なら7,000円が目安です。数千円の負担で「裁判なしで差し押さえできる書類」が手に入ると考えれば、決して高くありません。
連帯保証人を立てる場合の注意点
回収の確実性をさらに高める手段が連帯保証人です。借主が払えないとき、保証人に全額を請求できます。保証人は「先に本人へ請求して」と断れません。
ただし、保証契約には厳格なルールがあります。保証契約は書面でしなければ無効です。口頭で「保証するよ」と言われても効力はありません。契約書に保証人の欄を設け、本人に自署と押印をしてもらってください。
SNSの個人間融資で契約書を交わすのは安全?
「#個人間融資」というハッシュタグを見たことはありませんか。SNSで知り合った相手とお金の貸し借りをする動きです。契約書を用意してくる相手もいます。しかし、書類があっても安全とは限りません。
個人を装ったヤミ金業者の典型的な手口
金融庁は、SNS経由の個人間融資について繰り返し注意を呼びかけています。投稿者の多くは、個人を装ったヤミ金融業者だからです。「誰でも貸します」「ブラックOK」といった甘い言葉が入口になります。
手口には型があります。先に身分証や口座情報を送らせる、保証金名目でお金を振り込ませる、貸付前に連絡を絶つなどです。契約書らしき書類を見せてくるのは、相手を信用させるための演出にすぎません。書類の有無で安全性は判断できないのです。
契約書があっても違法な高金利は無効になる
「契約書にサインしたから払うしかない」と思い込む必要はありません。利息制限法の上限を超える利息は、契約書に書いてあっても無効です。10日で1割の「トイチ」のような条件は、法律上まったく保護されません。
出資法の上限を超える貸付は、貸した側が刑事罰を受ける行為です。違法な利息を求められたら、支払う前に相談窓口へ連絡してください。警察、金融庁の金融サービス利用者相談室、消費生活センターが対応しています。
個人でも貸金業法に抵触するケースとは?
貸す側にも法律の壁があります。反復継続する意思を持ってお金を貸す行為は、個人でも貸金業法上の「貸金業」に該当します。営むには国か都道府県の登録が必要です。
SNSでの募集はさらに踏み込んだ問題になります。不特定多数が見られる場所で「お金貸します」と書き込む行為は、貸金業法が規制する勧誘に該当するおそれがあります。友人1人に貸すのとは、法的な意味がまったく違うと理解してください。
貸す側が契約書作成で注意すべきポイント
ここからは立場別の実務です。まずは貸主側。お金を出す側には「返ってこないリスク」と「法律・税金のリスク」の両方があります。契約書の工夫で減らせる部分を押さえましょう。
返済されない事態に備える条項の入れ方
分割払いで貸すなら、期限の利益喪失条項を入れてください。「支払いを2回怠ったときは、残額を直ちに一括で支払う」といった定めです。これがないと、滞納されても毎月分しか請求できません。
連絡先の変更を通知させる条項も有効です。住所や電話番号が変わったら届け出る、と書いておくだけで、音信不通への抑止になります。回収の場面を想像しながら条項を組み立てるのがコツです。
繰り返しの貸付けに貸金業登録が必要な理由とは?
「利息が取れるなら、何人かに貸そうか」。この発想は危険です。先ほど触れたとおり、反復継続の意思がある貸付は貸金業に当たります。無登録での営業は犯罪です。
知人1人への単発の貸付なら、通常は問題ありません。ただし、複数の相手に繰り返し利息付きで貸す行為は、個人でも無登録営業と判断されるおそれがあります。副業感覚の貸付には手を出さないでください。
贈与とみなされないために記録を残す方法
家族間の貸し借りで特に注意したいのが贈与税です。「ある時払いの催促なし」のような貸付は、実態として贈与と判断されることがあります。年間110万円の基礎控除を超えると、借主側に贈与税がかかります。
対策は記録です。契約書を作り、銀行振込で貸し、毎月の返済も振込で受け取る。この3点がそろえば、貸付の実態を客観的に示せます。無利息や極端に長い返済期間も贈与を疑われる要因になるため、現実的な条件を設定しましょう。
借りる側が契約書で確認すべきポイント
契約書は貸主だけの道具ではありません。借りる側にとっても、不当な請求から身を守る武器になります。署名する前に確認すべき点を3つに絞って解説します。
不利な条項が紛れ込んでいないかの確認方法
まず利率を見てください。元本に応じた利息制限法の上限と照らし合わせます。年18%や15%を超える数字が書かれていたら、その契約は危険信号です。
遅延損害金と期限の利益喪失条項もチェックします。「1日でも遅れたら残額を一括請求」「保証金を先に支払う」といった条項は、署名前に必ず立ち止まってください。意味が分からない条項があれば、その場で質問し、納得できるまで署名しないことです。
身分証や口座情報を求められたときの対応
面識のない相手から、身分証の画像や勤務先、家族の連絡先を求められたら警戒してください。個人情報は、違法な取り立てや詐欺の道具に使われます。SNS経由の相手なら、なおさらです。
本人確認自体は正当な手続きです。ただ、渡してよいのは、信頼できる相手との対面での提示までが基本です。画像データの送信は悪用されると回収できません。キャッシュカードや通帳の送付を求める相手とは、絶対に契約しないでください。
契約書の控えを必ず保管すべき理由
契約書は2通作成し、借主も原本を1通持ちます。控えがないと、返済額や残高を自分で確認できません。「まだ残っている」と水増し請求されても反論が難しくなります。
返済のたびに記録を残すことも大切です。振込明細や領収書は、完済を証明する唯一の証拠です。完済時には、契約書の原本返還か「完済した」旨の書面をもらいましょう。ここまでやって、貸し借りは本当に終わります。
契約書を作った後に返済トラブルが起きたらどうする?
契約書を作っても、返済が止まることはあります。そのときに慌てないために、回収の手順を知っておきましょう。段階を踏めば、個人でも打てる手は意外と多くあります。
内容証明郵便で請求する方法
最初の一手は内容証明郵便です。誰が、いつ、どんな内容の手紙を送ったかを郵便局が証明してくれます。「期日までに支払いがなければ法的手続きに移る」と書けば、本気度が伝わります。
内容証明には時効への効果もあります。催告として、時効の完成を6か月間猶予させる力があります。請求した事実が形に残るため、その後の裁判でも証拠として使えます。文面に不安があれば、行政書士や弁護士に作成を依頼できます。
少額訴訟・支払督促という選択肢
それでも払われなければ、裁判所の出番です。60万円以下の請求なら、少額訴訟が使えます。原則1回の期日で判決が出る、簡易裁判所の手続きです。
書類審査だけで進む支払督促という方法もあります。相手が異議を出さなければ、判決と同じように強制執行へ進めます。執行認諾文言付き公正証書を作っていた場合は、これらの手続きを飛ばして差し押さえに入れます。事前準備の差がここで効いてきます。
貸したお金の消滅時効は何年か
貸金の請求権には時効があります。2020年4月1日以降の契約では、ルールは次のとおりです。
| 起算点 | 期間 |
|---|---|
| 権利を行使できると知った時から | 5年 |
| 権利を行使できる時から | 10年 |
個人間でも、原則として早いほうの経過で時効が完成します。返済期日を過ぎたまま5年放置すると、請求できなくなるおそれがあります。時効を止めるには、裁判上の請求や相手の債務承認が必要です。「そのうち払うよ」という一筆も承認の証拠になります。
個人間融資の契約書テンプレートの入手方法
ゼロから契約書を書くのは大変です。実務では、ひな形を土台にして自分の条件に書き換える方法が一般的です。入手先ごとの注意点と、専門家に頼む場合の相場を紹介します。
無料テンプレートを使う際の注意点
行政書士事務所や電子契約サービスのサイトでは、無料のひな形が配布されています。Word形式なら、金額や日付を自分の条件に差し替えるだけで形になります。
ただし、そのまま使うのは危険です。テンプレートの利率や条項が、自分の貸付条件や利息制限法に合っているとは限りません。必須8項目がそろっているか、上限金利を超えていないか。必ず自分の目で確かめてから署名してください。
専門家に作成を依頼する場合の費用相場
金額が大きい、相手との関係が複雑、条項に自信がない。そんなときは専門家への依頼が確実です。契約書の作成は行政書士や弁護士に頼めます。
費用の目安は、行政書士で2万円から5万円程度です。弁護士に依頼すると5万円以上かかることが多いものの、トラブル発生後の交渉まで任せられます。公正証書にする場合の段取りも相談できます。貸付額の数%の出費で安心を買う、と考えると判断しやすいです。
手書きで契約書を作成する場合のポイント
手書きでも契約書は有効です。便箋やコピー用紙で構いません。大事なのは紙の質ではなく、必須8項目が漏れなく書かれていることです。
手書きならではの注意点があります。消えるボールペンや鉛筆は使わない、金額は詰めて書く、訂正は二重線と訂正印で行う。この3つを守ってください。書き損じが多いなら、新しい用紙に書き直すほうが安全です。
個人間融資の契約書に関するよくある質問(FAQ)
最後に、個人間融資の契約書でよく寄せられる疑問に答えます。細かいけれど実務で必ずぶつかるポイントばかりです。気になる項目だけ拾い読みしても役立つはずです。
契約書なしで貸したお金は取り戻せる?
取り戻せる可能性はあります。契約書がなくても、貸付の事実を別の証拠で示せればよいからです。振込記録、LINEのやり取り、返済の一部入金などが材料になります。
とはいえ、立証のハードルは確実に上がります。今からでも「債務承認書」や借用書を相手に書いてもらえば、強力な証拠になります。関係が悪化する前に、書面化を持ちかけてみてください。
家族間の貸し借りでも契約書は必要?
必要です。むしろ家族間こそ作るべきです。理由は税金にあります。記録のない多額の資金移動は、税務署に贈与と判断されるおそれがあります。
親子間の住宅資金の援助などは、特に見られやすい場面です。契約書と振込による返済実績をセットで残せば、貸付であることを説明できます。「家族だから不要」という思い込みが、いちばん高くつきます。
LINEやメールのやり取りは証拠になる?
なります。金額や返済の約束が読み取れるメッセージは、貸付を裏づける証拠として使えます。2020年4月施行の改正民法では、電磁的記録による消費貸借の合意も認められました。
ただし、単独では弱い場面もあります。アカウント名だけでは相手の本人性を特定しにくいからです。スクリーンショットは日付ごと保存し、振込記録と組み合わせて補強してください。
契約書はコピーや写真でも有効?
契約の効力は原本で生じます。コピーや写真は「原本が存在した」ことを示す補助的な証拠にとどまります。裁判では原本の提出を求められるのが原則です。
だからこそ原本の管理が重要です。原本を紛失すると、証明力が大きく落ちます。2通作成して双方が保管し、スマホで撮影した控えも別に残しておくと安心です。
収入印紙の費用はどちらが負担する?
法律上、印紙税は文書の作成者が納めます。契約書を2通作る場合は、それぞれの保管者が自分の分を負担するのが一般的です。
実務では話し合いで決めて構いません。「印紙代は借主の負担とする」と契約書に書いておけば、後のもめごとを防げます。数百円のことで気まずくならないよう、作成時に決めておきましょう。
まとめ:個人間融資の契約書は必須項目と法令遵守がカギ
契約書は、お金と同じくらい人間関係を守る道具です。必須8項目をそろえ、利息制限法と印紙税のルールを守れば、個人でも十分に通用する書面が作れます。高額の貸付なら、執行認諾文言付き公正証書まで進めておくと回収力が変わります。
今日できる一歩は、貸し借りの条件を紙に書き出すことです。金額、返済日、利息の3点をメモするだけでも、契約書の骨組みになります。すでに口約束で貸している人は、債務承認書の作成を相手に提案してください。SNSで知り合った相手との取引に不安があるなら、契約前に金融庁の金融サービス利用者相談室や消費生活センターへ相談する選択肢もあります。
参考文献
- 「SNS等を利用した『個人間融資』にご注意ください!」- 金融庁
- 「SNSなどを通じた『個人間融資』で見知らぬ相手から借入れをするのはやめましょう!」- 国民生活センター
- 「5-1 金銭消費貸借」- 日本公証人連合会
- 「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」- 国税庁
- 「利息制限法」- e-Gov法令検索
- 「民法」- e-Gov法令検索