過去に詐欺の被害に遭い、悔しい思いをされた経験はありませんか。そんな心の傷につけこみ、「失ったお金を取り戻せますよ」と甘い言葉で近づいてくるのが「被害回復詐欺」です。一度被害に遭った方を再び狙う、非常に悪質な手口で、特に高齢者の方がターゲットにされやすくなっています。
この記事では、被害回復詐欺とはどのようなものか、なぜ高齢者が狙われるのかを、具体的な実例を交えて詳しく解説します。大切な資産を二度も奪われる「二次被害」を防ぐために、この手口を正しく理解し、あなたとあなたの大切な家族を守るための知識を身につけましょう。
被害回復詐欺とは?「取り戻せる」は新たな罠
「被害回復詐欺」とは、過去に投資詐欺や振り込め詐欺などでお金をだまし取られた人に対して、「その被害を回復してあげる」と持ちかけ、手数料や調査費用などの名目で、さらにお金をだまし取る手口のことです。失ったお金を取り戻したいという被害者の気持ちを利用した、二次的な詐欺行為なのです。
1. 過去の被害につけこむ悪質な二次被害の手口
この詐欺の最も悪質な点は、被害者の「損した分を取り返したい」という切実な願いにつけこむところにあります。犯人は、警察官や弁護士、消費者センターの職員など、信頼できそうな肩書を名乗って電話をかけてきます。
そして、「犯人グループを逮捕しました」「あなたの被害金を取り戻す権利があります」などと、希望を持たせるような嘘を並べます。しかし、これはすべて、あなたからさらにお金をだまし取るための、新たな詐欺の始まりなのです。
2. なぜ犯人はあなたの被害を知っているのか?(被害者名簿の存在)
「どうして、私が以前に被害に遭ったことを知っているの?」と不思議に思うかもしれません。その理由は、詐欺グループの間で、過去に騙した人のリスト、いわゆる「被害者名簿(カモリスト)」が出回っているからです。
一度詐欺に遭った人の個人情報は、他の詐欺グループに売買されています。そのため、新たな詐欺師は、あなたがどのような被害に遭ったのかを知った上で、あたかも救済者であるかのように連絡してくるのです。
3. 還付金詐欺との違いと共通点
被害回復詐欺とよく似た手口に「還付金詐欺」があります。どちらも「お金が戻ってくる」という点で共通していますが、少し違いがあります。
| 詐欺の種類 | 口実 |
|---|---|
| 被害回復詐欺 | 過去に遭った詐欺の被害金を取り戻すという名目 |
| 還付金詐欺 | 税金や医療費、保険料などの公的なお金が戻ってくるという名目 |
還付金詐欺は、市役所や税務署の職員を名乗ることが多いのが特徴です。しかし、どちらの詐欺も「お金を受け取るために、先に手数料などを支払う必要がある」と言ってくる点は全く同じです。
なぜ高齢者が被害回復詐欺のターゲットにされるのか?
この被害回復詐欺のターゲットは、残念ながら高齢者の方に集中しています。詐欺師たちは、シニア世代が持つ特有の心理や傾向を分析し、そこを巧みに突いてきます。なぜ高齢者が狙われやすいのか、その理由を知っておくことが、騙されないための第一歩になります。
1. 「損を取り戻したい」という切実な心理の悪用
大切に貯めてきたお金を詐欺で失ってしまった悔しさや、「何とかして取り戻したい」という気持ちは、誰しもが持つ自然な感情です。特に、退職金や老後のための資金を失った場合、その思いはより一層強くなります。
詐欺師は、この切実な心理を悪用します。正常な判断が難しい状態にあることを見抜き、「お金が戻るなら」と、多少怪しくても信じてしまいやすい心の隙を狙ってくるのです。
2. 公的機関や専門家を名乗られると信じやすい傾向
多くの方は、警察官や弁護士、市役所の職員といった公的な立場の人に対して、深い信頼を寄せています。真面目に暮らしてきた方ほど、その傾向は強いかもしれません。
詐欺師は、この信頼感を逆手にとります。本物と見分けがつかないように、実在する組織名や職員の名前をかたり、「公の機関が言うことだから間違いないだろう」と信じ込ませてしまうのです。
3. 過去の詐欺被害者リストに載っている可能性の高さ
残念ながら、過去に一度でも詐欺の被害に遭ってしまうと、その情報が「被害者名簿」に登録されてしまいます。そして、その名簿は、様々な詐欺グループの間で共有されてしまいます。
高齢者の方は、振り込め詐欺などのターゲットにされやすいため、結果的にこの名簿に名前が載っている可能性が高くなります。そのため、二次被害である被害回復詐欺の電話も、かかってきやすくなってしまうのです。
高齢者が注意すべき被害回復詐欺の代表的な実例
「お金を取り戻します」という詐欺師の言葉は、非常に巧妙です。彼らは、思わず信じてしまいそうになる、もっともらしいシナリオを用意しています。ここでは、実際に報告されている代表的な4つの実例を紹介します。このパターンを覚えておきましょう。
1. 実例1:警察官や金融庁職員を名乗る手口
「警視庁の〇〇です。先日あなたが被害に遭われた詐欺グループを逮捕し、資産を押収しました。あなたの被害金も回収できましたが、現金で受け取るには、手数料として3万円を先に振り込んでください」
このように、公的機関の職員を名乗って信頼させ、手数料や税金といった名目でお金を要求してきます。しかし、警察や金融庁が、被害金の返還のために電話で連絡してきたり、手数料を要求したりすることは絶対にありません。
2. 実例2:「集団訴訟で取り返す」と持ちかける手口
「〇〇詐欺の被害者の会です。私たちが代わりに集団訴訟を起こし、被害金を取り戻します。訴訟に参加するには、参加費用として一人5万円が必要です。この訴訟に勝てば、被害金は全額戻ってきます」
被害者団体やNPO法人を名乗り、集団訴訟への参加を呼びかける手口です。「みんなでやれば取り返せる」という一体感を煽りますが、その実態は詐欺グループです。参加費用をだまし取ることが目的で、訴訟が起こされることはありません。
3. 実例3:「流出した個人情報を削除する」と要求する手口
「あなたが以前に騙された詐欺で、個人情報が流出しています。このままでは、別の詐欺にも利用されて危険です。私たちが、リストからあなたの情報を削除しますが、削除費用として10万円かかります」
被害に遭った後の不安な気持ちにつけこみ、個人情報の削除を持ちかけてきます。しかし、一度流出した個人情報を完全に削除することは不可能です。これも、不安を煽ってお金をだまし取るための嘘です。
4. 実例4:別の金融商品の購入へ誘導する手口
「詐欺で失ったお金を取り戻す、特別な救済措置があります。この未公開株を購入すれば、確実に3倍になります。これで被害を回復してください。あなただけに紹介する特別な案件です」
被害の回復を口実に、別の投資話を持ちかけてくる手口です。しかし、これもまた新たな投資詐欺に他なりません。損を取り返そうと焦る気持ちを利用し、さらに大きなお金をだまし取ろうとする、非常に悪質な手口です。
二次被害を防ぐために!被害回復詐欺を見破る4つのポイント
巧妙な被害回復詐欺ですが、その手口には必ず「不自然な点」があります。詐欺師の言葉に惑わされず、冷静に相手の言動をチェックすれば、嘘を見破ることができます。二次被害に遭わないために、以下の4つのポイントを必ず覚えておいてください。
1. ポイント1:「被害回復のためにお金が必要」は100%詐欺
これが最も重要な鉄則です。名目が手数料、保証金、税金、訴訟費用など何であれ、「失ったお金を取り戻すために、まずあなたがお金を支払う必要がある」と言われたら、その時点で100%詐欺です。
本当に行政や弁護士を通じてお金が返還される場合、手数料などは返還される金額から差し引かれるのが普通です。事前にお金を振り込ませることは、絶対にありません。
2. ポイント2:電話口で「あなただけ」「今日中に」と契約を急かす
詐欺師は、あなたに冷静に考える時間を与えません。「この救済措置は、本日が締め切りです」「他の人には内緒の、あなただけの特別な話です」などと言って、その場で決断を迫ってきます。
これは、家族や警察に相談されるのを防ぐための手口です。少しでも考える時間を与えずに契約を急がせる相手は、絶対に信用してはいけません。
3. ポイント3:レターパックや宅配便で現金を送らせようとする
「銀行振り込みだと記録が残るので、レターパックや宅配便で現金と書類を送ってください」など、現金を手渡しや郵送で送るように指示してくることがあります。
これは、自分たちの足跡を残さず、お金をだまし取るための典型的な手口です。公的な手続きで、現金を郵送させるようなことは絶対にありえません。
4. ポイント4:公的機関の職員が個人の携帯電話から連絡してくる
警察官や市役所の職員が、個人の携帯電話から重要な連絡をしてくることは、まずありません。必ず、職場の固定電話からかけてきます。
電話をかけてきた相手が携帯電話の番号だったり、連絡先として携帯電話の番号を伝えられたりした場合は、本人になりすましている詐欺師である可能性が非常に高いです。
被害回復詐欺の電話がかかってきた時の正しい対処法
もし、あなたの元に「お金が戻る」という、被害回復詐欺を疑わせる電話がかかってきたら、どうすればよいのでしょうか。慌てず、冷静に行動することが大切です。相手のペースに乗せられないための、具体的な対処法を紹介します。
1. その場で判断せず「家族に相談します」と一度電話を切る
相手がどんなにもっともらしいことを言ってきても、その場で絶対に判断してはいけません。「ありがとうございます。一度家族と相談してから、またこちらから連絡します」と言って、一方的に電話を切りましょう。
詐欺師は、あなたが誰かに相談することを極端に嫌がります。「家族には内緒で」などと言ってきても、絶対に応じてはいけません。電話を切って、信頼できる人に相談することが、被害を防ぐ最も確実な方法です。
2. 知らない番号からの電話には出ない・かけ直さない
そもそも、知らない番号からの電話には出ない、というのも非常に有効な対策です。留守番電話機能などを活用し、本当に必要な用件であれば、相手がメッセージを残すはずです。
また、着信履歴に残った知らない番号に、興味本位でかけ直すのもやめましょう。それが詐欺グループの番号である可能性があります。
3. 相手の言う儲け話や甘い言葉には絶対に乗らない
「失ったお金が戻ってくる」という話は、被害者にとって非常に魅力的です。しかし、「うまい話には裏がある」ということを、常に心に留めておいてください。
詐欺師は、あなたの心の弱みにつけこむプロです。どんなに甘い言葉をかけられても、「そんなうまい話があるはずがない」と、きっぱりと断る強い意志を持つことが大切です。
万が一被害に遭ってしまったら?信頼できる相談窓口
万が一、被害回復詐欺にお金を支払ってしまった場合でも、決して諦めないでください。すぐに適切な場所に相談すれば、被害の拡大を防いだり、お金が戻ってくる可能性もゼロではありません。一人で悩まず、以下の窓口に助けを求めましょう。
1. 警察相談専用電話「#9110」
詐欺は犯罪です。お金をだまし取られてしまったら、すぐに警察に相談してください。緊急の事件でなければ、110番ではなく、警察相談専用電話の「#9110」に電話します。今後の手続きや、他にすべきことについてアドバイスをもらえます。
2. 消費生活センター・消費者ホットライン「188」
契約トラブルや悪質な商法に関する専門家が、消費生活センターの相談員です。電話番号「188(いやや!)」にかければ、お近くの相談窓口につながります。詐欺の手口に詳しく、具体的な解決策を一緒に考えてくれます。
3. 弁護士会や法テラスへの法律相談
犯人の口座を凍結する手続きや、損害賠償請求など、法的な手続きが必要になる場合は、弁護士や司法書士に相談しましょう。費用の支払いが難しい場合は、国が設立した「法テラス(日本司法支援センター)」で、無料の法律相談や費用の立て替え制度を利用できる場合があります。
まとめ
過去の詐欺被害につけこむ「被害回復詐欺」は、被害者の「お金を取り戻したい」という切実な願いを悪用する、二重に許しがたい犯罪です。警察官や弁護士を名乗り、巧妙な言葉で近づいてきますが、その手口には必ず共通点があります。それは、「被害を回復するために、まずお金を払ってください」という要求です。この一言が出たら、100%、間違いなく詐欺です。
もし、あなたやあなたの家族の元に「お金が戻る」という電話がかかってきたら、絶対にその場で判断せず、すぐに電話を切ってください。そして、一人で悩まず、必ず誰か信頼できる人に相談しましょう。家族や友人、あるいは警察や消費生活センターでも構いません。誰かに話すだけで、冷静さを取り戻し、二次被害の罠から逃れることができます。甘い言葉に惑わされず、大切な資産をしっかりと守りましょう。