愛知県で発生した8億7000万円の特殊詐欺被害は、県内で確認された中で過去最高額とされています。きっかけは1枚のネット広告でした。著名人の名前を借りた偽広告からLINEへ誘導され、偽の投資アプリで利益が出ているように見せかける流れが組み合わさっています。
ここでは愛知県警が2026年5月20日に公表した内容をもとに、8.7億円被害の全容を整理します。著名人偽広告とLINE誘導の手口の構造、送金経路、相談先まで、ひとつずつ順番に確認していきます。
- 愛知県の80代男性が8億7000万円を詐取された事件の概要とは?
- 8億7000万円という被害額が過去最悪と言われる理由とは?
- 著名人をかたるネット広告から始まった侵入経路とは?
- LINEに誘導された後にどのようなやり取りが進んだか?
- 偽の投資アプリで利益が出ているように見せた手口とは?
- 8億7000万円はどのような形で送金されたのか?
- SNS型投資詐欺が全国で過去最悪を更新している背景とは?
- 被害に遭った場合に最初に取るべき行動とは?
- 被害金を取り戻せる可能性と二次被害のリスクとは?
- 自分や家族を同じ被害から守るために確認すべきポイントとは?
- SNS事業者と広告プラットフォームの責任はどこまで問えるか?
- 詐欺グループの拠点と捜査の見通しはどうなっているか?
- 著名人を語った偽広告に騙されないための事前チェックとは?
- 愛知県や周辺地域で利用できる相談窓口はどこか?
- よくある質問
- まとめ
愛知県の80代男性が8億7000万円を詐取された事件の概要とは?
最初に、事件の輪郭をつかんでおきましょう。愛知県警が明らかにした被害額、被害発生の時期、県内での位置づけを3つの角度から押さえます。報道で断片的に伝わっている情報を、ひとつの流れにまとめてみます。
愛知県警が2026年5月20日に発表した被害内容
愛知県警は2026年5月20日に、県内に住む80歳代の男性がSNS型投資詐欺で約8億7000万円をだまし取られたと発表しました。被害者は2026年に入ってから、著名人の名前が使われた投資関連のネット広告を見たことが入り口になっています。
広告からLINEに誘導され、その後に詐欺グループの指示に従う形で送金が始まりました。被害が発覚したのは複数回の送金が完了したあとです。一度信用してしまうと、途中で立ち止まる機会が少ない構造になっていることが分かります。
被害が5月までに複数回に分けて発生した経緯
送金は1度きりではありません。被害者は2026年5月までに、指定された口座へ何度も振り込みを行いました。さらに金地金や現金そのものを渡す形でも資金が流れています。
手段が振込だけに限られなかった点が、本件の被害額をふくらませた要因のひとつです。複数の送金経路を組み合わせることで、銀行側の不審検知をくぐり抜けやすくなります。被害者本人はアプリの画面上で利益が表示されていたため、危険信号に気づきにくい状態が続きました。
県内特殊詐欺被害として過去最高額となった位置づけ
捜査関係者によれば、約8億7000万円という金額は愛知県内で確認された特殊詐欺被害として過去最高額とみられています。1人の被害者から1つの事件で詐取された金額としては、極めて異例の規模です。
県警が公表した時点で、男性は8億7000万円の大半を失っている状態でした。投資アプリの画面上では利益が出ているように見えていたため、本人が詐欺だと気づくまでに時間がかかった経緯があります。
8億7000万円という被害額が過去最悪と言われる理由とは?
「過去最悪」という言葉は、どの範囲を指しているのでしょうか。県内被害との比較、全国の平均額との差、警察庁の統計との関係を順に見ていきます。数字を並べると、本件の特異さがはっきりしてきます。
愛知県内における過去の特殊詐欺被害との比較
愛知県は人口が多く、特殊詐欺の被害件数も毎年多く確認されている地域です。それでも1件で8.7億円という規模は突出しています。これまで県内で報じられてきた高額事案は1人あたり数千万円から1億円台が中心でした。
1桁違う被害額が単独事案で発生したことが、過去最悪と評される根拠になっています。被害者の年齢が80歳代であることも、資産形成の時間を取り戻せないという意味で重大さを増しています。
全国のSNS型投資詐欺1件あたり平均被害額との差
警察庁の公表資料によると、SNS型投資詐欺は1件あたりの被害額が1000万円を超えるケースが珍しくありません。とはいえ平均値は数百万円から1000万円規模に収まることが多い水準です。
本件は平均的なSNS型投資詐欺と比べて、ざっと80倍以上の被害額にあたります。被害者が高齢者で資産規模が大きかったこと、複数回の送金が止まらなかったこと、この2点が異常な金額に直結しました。
警察庁が公表する2025年通年1274.7億円の被害状況との関係
警察庁の集計では、2025年通年のSNS型投資詐欺被害額は1274.7億円に達しています。前年比でおよそ1.4倍の規模です。SNS型ロマンス詐欺と合わせると、特殊詐欺全体を上回る被害額が出ています。
全国規模で被害が拡大している中で、本件の8.7億円は1件で全国被害額の約0.7%を占める計算になります。1人の被害が統計全体の比率を動かす水準です。SNS型投資詐欺の深刻さを象徴する事件と位置づけられます。
著名人をかたるネット広告から始まった侵入経路とは?
被害の始まりは特別な場所ではありません。誰もが目にするネット広告です。男性が最初に触れた広告の特徴、SNSへ誘導される導線、本物と偽物を見分ける方法をひとつずつ整理します。
男性が最初に目にした投資関連ネット広告の特徴
被害者がアクセスしたのは、投資関連の広告でした。広告には著名人の名前や写真が使われており、「無料で投資ノウハウを教える」「確実に儲かる方法を共有する」といった内容を含むものが典型です。
著名人の知名度を利用することで、初めて見る人の警戒心を一気に下げる設計になっています。広告の見た目はまっとうなニュース記事や紹介ページのように作られていることが多く、ぱっと見では偽物だと判別しにくい点が特徴です。
広告から外部SNSへ誘導される導線の仕組み
広告をクリックすると、多くの場合LINEの公式アカウントや個別チャットへ誘導されます。本件でも、男性は広告経由でLINEに移動し、そこから詐欺グループとのやり取りが始まりました。
SNSに移った時点で、広告プラットフォーム側の監視が届きにくくなる仕組みです。サクラ役を含めた複数人がやり取りに加わり、投資グループという体裁が整えられていきます。一度LINEに入ると、外部の冷静な視点が入る機会が大きく減ります。
著名人本人の公式発信と偽広告を見分ける確認手順
本人になりすました広告を見抜くには、いくつかの確認手順を踏むことが大切です。
- 著名人本人の公式SNSアカウントを開く
- 同じ内容の投資勧誘を本人が発信しているかを確かめる
- 認証マークの有無を確認する
- 「無料で投資を教える」と本人が言っているかを再確認する
著名人が無料で個別に投資指導することは、基本的にありません。広告と本人発信が一致しない時点で、その広告は偽物だと判断して問題ないでしょう。
LINEに誘導された後にどのようなやり取りが進んだか?
広告クリックから本格的なやり取りに進む段階を見ていきます。最初の接触、サクラの存在、役割分担という3つの観点から、信用が積み上げられる過程を追います。仕組みを知っておくと、入り口で立ち止まりやすくなります。
詐欺グループが信頼を獲得するための初期接触の流れ
LINEに誘導された直後は、いきなり大金を要求されるわけではありません。最初は「投資の基礎を教える」「成功者の体験談を共有する」といった軽い内容から始まります。
警戒心を下げるための助走期間が用意されている点が大きな特徴です。やり取りが数日続いた段階で、少額の投資を勧められます。最初の入金で「利益が出た」と表示されることで、信頼が一気に深まる仕掛けです。
グループチャットに同席するサクラ役の存在
個別のLINEから、投資グループのチャットに招待される流れもよく見られます。グループ内では複数の参加者が「自分も利益が出た」「先生のおかげで生活が楽になった」と発言しています。
これらの参加者の多くがサクラです。同じグループ内に共感する声があると、人は判断を緩めやすくなります。詐欺グループ側は、この心理を計算した上でチャット環境を作り込んでいます。
「先生」「助手」と名乗る人物の役割分担
やり取りに登場するのは1人だけではありません。多くの場合「先生」と呼ばれる著名人を装った人物と、その「助手」を名乗るスタッフ役が同時に存在します。
- 先生役:相場観や投資判断を語り、権威性を演出する
- 助手役:日常のやり取りを担当し、被害者の感情に寄り添う
- グループ参加者役:成功体験を投稿し、雰囲気を盛り上げる
役割分担によって、フィクションが立体的に組み立てられていく構造です。1人の声だけならば疑えても、複数の声が揃うと信じ込みやすくなります。
偽の投資アプリで利益が出ているように見せた手口とは?
本件で被害を長引かせた決定打が、偽の投資アプリです。アプリの正体、画面上の表示の仕組み、気づきが遅れる心理的な要因を順番に解きほぐします。仕組みを知ると、「儲かっている画面」がいかに作られたものかが見えてきます。
インストールを促された投資アプリの正体
被害者は詐欺グループの指示で、投資アプリをスマートフォンにインストールしました。アプリは正規のアプリストアではなく、URLを直接送られて入手するケースが多いとされています。
金融庁の登録を受けていない、出所不明のアプリであることがほとんどです。見た目は本物の証券アプリに似せて作られており、ログイン画面や口座残高表示も精巧に再現されています。
アプリ画面上に表示される運用利益のカラクリ
アプリには口座残高や運用利益が日々表示されます。被害者にはこの数字が本物の運用結果に見えますが、実態は詐欺グループが自由に書き換えられる表示にすぎません。
実際の市場と連動しているわけではなく、見せかけの数字が並んでいるだけです。被害者が「利益が出ている」と喜んでいる裏側で、振り込まれた現金はすでに詐欺グループの手に渡っています。利益表示は次の入金を促すための演出です。
詐欺と気付くのが遅れる心理的トリガー
利益が出ているように見えるアプリを毎日見ていると、不安よりも期待が勝ちます。「もっと入金すればもっと増える」という発想に切り替わっていきます。
- 含み益が出ているように見えるダッシュボード
- 出金しようとすると「税金の前払いが必要」と求められる流れ
- 「上位プランに移行すれば倍増する」という追加提案
人は損を確定させたくない心理が働くため、出金よりも追加入金を選びやすくなります。この心理が、被害を膨らませる最大の要因です。
8億7000万円はどのような形で送金されたのか?
8.7億円という金額は、銀行振込だけで動かしたわけではありません。本件で確認されている送金手段、現金や金地金が組み合わされた背景、犯行グループ側の進化を見ていきます。手段の多様化を知ると、防御の難しさが見えてきます。
指定口座への振込が複数回行われた経緯
最初の入り口は、指定口座への銀行振込でした。詐欺グループは複数の口座を用意し、振込のたびに振込先を変えています。
1つの口座に大金が集中しないよう分散させることで、金融機関の不審検知を回避しています。被害者側からは「業務上の都合で口座が変わる」と説明されることが多く、不自然さを感じにくい状況が作られていました。
金地金や現金の手渡しが組み合わされた背景
本件では振込だけでなく、金地金や現金が直接渡されたことも確認されています。金地金は換金性が高く、追跡もしにくい資産です。
振込以外の手段が増えるほど、警察や金融機関の介入余地は狭まります。受け取り役(受け子)が現地に派遣されるケースもあり、被害者は対面で渡したことで「ちゃんとした担当者だ」と誤認しやすくなります。
口座凍結を回避する犯行グループ側の手口の進化
近年、金融機関の口座凍結スピードが上がっています。詐欺グループはその対応に合わせて、送金手段を変えてきました。
| 送金手段 | 詐欺グループ側のねらい |
|---|---|
| 銀行振込 | 振込先口座を頻繁に変更し、凍結前に資金を抜く |
| 金地金 | 換金性が高く追跡されにくい |
| 現金手渡し | 銀行を経由しないため凍結対象にならない |
| 暗号資産 | 海外送金が容易で資金洗浄に使われやすい |
手段が多様化したことで、本件のように1人から8.7億円を引き出す環境が整ってしまったといえます。
SNS型投資詐欺が全国で過去最悪を更新している背景とは?
本件は単独の事件ではなく、全国的な流れの中で起きています。認知件数の推移、最新の誘導経路、技術的な背景を見ておきましょう。背景を知ると、本件が「特殊な人だけが遭うもの」ではないことが分かります。
警察庁が公表する認知件数と被害額の推移
警察庁の集計によると、SNS型投資詐欺の認知件数は2025年に9538件に達しました。被害額は1274.7億円で、2024年の約1.4倍に膨らんでいます。
特殊詐欺全体の被害額を上回る規模に達した点が重要です。電話を使った従来型の特殊詐欺よりも、SNSを介した投資詐欺のほうが金額面では大きな脅威になっています。被害層は男性がやや多く、40代から60代が中心ですが、本件のように80代の被害も増加傾向です。
YouTubeバナー広告やInstagramのDMから誘導される最新潮流
2025年から2026年にかけて、誘導経路として目立っているのが動画配信サイトの広告とSNSのダイレクトメッセージです。YouTubeのバナー広告、Instagramのストーリー広告、X(旧Twitter)の投稿などが入り口になっています。
真面目な投資情報を探している人ほど、関連する偽広告に出会いやすい構造です。アルゴリズムは興味関心に基づいて広告を最適化するため、投資に関心を持った瞬間から偽広告が流れ込んできます。
ディープフェイク技術が偽広告の信ぴょう性を高めている現状
近年、AIを使って著名人の顔と声を再現するディープフェイク動画が広告に使われ始めました。本人が話しているように見える動画は、初見では見分けがつかないレベルです。
- 口の動きと音声のズレ
- 目や肌の質感の不自然さ
- 背景のぼやけ方
こうした手がかりはあるものの、技術の進歩で判別はどんどん難しくなっています。動画が本物に見えても、まずは本人の公式チャンネルで同じ動画が公開されているかを確認することが現実的な対策です。
被害に遭った場合に最初に取るべき行動とは?
万が一被害に気づいた場合、最初の数時間の動き方が結果を左右します。警察への連絡、金融機関への依頼、金融庁の登録確認という3つの基本動作を整理します。あわてず順番に動くことが大切です。
警察への通報と被害届を出すまでの流れ
被害に気づいたら、まず警察相談専用電話#9110に連絡しましょう。緊急性が高い場合は110番でも構いません。
警察に状況を共有することで、銀行や決済事業者が口座凍結に動きやすくなります。被害届を提出すれば、振り込め詐欺救済法の手続きにつなげる土台になります。やり取りに使ったLINEのスクリーンショット、送金記録、アプリの画面など、できる限りの証拠を保全しておきましょう。
銀行・送金事業者への連絡で口座凍結を依頼する手順
警察への連絡と並行して、振込元の銀行に連絡を入れます。窓口でもコールセンターでも対応可能です。
- 振込日と金額を伝える
- 振込先の金融機関名と口座番号を伝える
- 詐欺被害として口座凍結を依頼する
スピードが命です。送金から時間が経つほど、口座にお金が残っている可能性は下がります。1時間でも早く銀行に伝えることが、回収可能額に直結します。
金融庁の登録業者一覧で振込先を確認する方法
詐欺かどうか判断に迷う段階で確認してほしいのが、金融庁の登録業者一覧です。金融商品取引業や暗号資産交換業の登録を受けている業者は、ここに掲載されています。
振込先として案内された業者名が一覧に存在しない場合、その時点で詐欺の疑いが非常に高いといえます。送金前に必ず確認する習慣を持っておくと、被害そのものを防ぐことができます。
被害金を取り戻せる可能性と二次被害のリスクとは?
被害金がどこまで戻るかは、多くの被害者が抱く切実な疑問です。救済法の仕組み、リカバリー詐欺、弁護士選びの観点を整理します。冷静な判断ができるよう、現実的な道筋を確認しておきましょう。
振り込め詐欺救済法による被害回復分配金の仕組み
日本には振り込め詐欺救済法という制度があります。詐欺に使われた口座が凍結された場合、その口座に残っている資金を被害者に分配する仕組みです。
ただし、口座にお金が残っていなければ分配は行われません。詐欺グループはスピード勝負で資金を引き出すため、現実には全額が戻ることは稀です。それでも一部でも回収できる可能性があるため、口座凍結の依頼は欠かせません。
「100%返金」を謳うリカバリー詐欺の手口
被害に遭った直後、SNS上に「100%返金させる」「ハッカーが取り戻す」と謳うアカウントが現れることがあります。これがリカバリー詐欺(被害回復詐欺)です。
着手金を払った直後に連絡が途絶える、追加費用を請求されるといった二次被害につながります。すでに被害に遭った人は判断力が弱っている状態のため、こうした勧誘に流されやすい点に注意が必要です。
弁護士に相談する際の本人面談を伴う事務所の選び方
正規の弁護士に相談する場合、いくつかの判断基準があります。
- 直接面談または厳格な本人確認を伴うWeb面談を行っている
- 着手金や報酬体系を書面で明示している
- 日本弁護士連合会の規程に沿った広告表現を用いている
「着手金無料」「100%返金成功」を強調する広告は、まず疑ってかかるべきです。地元の弁護士会や法テラスを通じて紹介を受ける方法も安全性が高いといえます。
自分や家族を同じ被害から守るために確認すべきポイントとは?
本件のような被害は、知識があれば多くの場面で防げます。著名人広告の原則、危険なフレーズへの対処、家族との会話例を順に確認します。日常会話レベルで共有できる内容に絞りました。
著名人が無料で投資指導することは基本的にないという原則
著名な投資家、経営者、芸能人が「無料で投資ノウハウを教える」と発信することは、原則として起こりません。本物の専門家は、有料の書籍やセミナー、雑誌で情報発信するのが普通です。
「無料で著名人から学べる」という入り口を見たら、それだけで疑う理由になります。この原則を1つ覚えておくだけで、入り口の段階で立ち止まれます。
「必ずもうかる」「あなただけ」といった文言を見たときの対処
詐欺広告には共通する言い回しがあります。
- 必ずもうかる
- あなただけに特別に
- 元本保証
- 損失ゼロ
- 短期間で何倍にも
金融商品で「必ず」や「保証」を語ることは、法律上できません。これらの言葉を見た時点で、規制の枠外にある勧誘だと判断しましょう。
高齢の家族と日常的に共有しておくべき会話の例
被害を防ぐには、家族の中で日常的に話題にしておくことが効果的です。
「最近こんな広告が増えているらしいよ」
「もし投資の話を持ちかけられたら、入金する前に一度教えてね」
「著名人が直接LINEで連絡してくることは絶対にないから注意してね」
ニュースをきっかけに話題に出すと、説教くさくならず自然な会話になります。家族の誰か1人が違和感に気づければ、それだけで被害は止められます。
SNS事業者と広告プラットフォームの責任はどこまで問えるか?
被害の入り口は広告です。広告を配信した事業者の責任を考える視点も欠かせません。各社の取り組み、政府の対策、利用者ができる行動を見ておきます。
LINEヤフーやMetaが公表している通報・削除の仕組み
LINEヤフーはYahoo!ファイナンス掲示板での詐欺投稿に対し、人の目とAIを組み合わせた24時間モニタリングを実施しています。Metaも著名人を悪用した広告に対する通報窓口を設けています。
通報したことが相手に通知されることはありません。気になる広告を見かけたら、迷わず通報機能を使うことが現実的な抑止につながります。
政府が2026年6月をめどに策定する総合対策の方向性
政府は投資詐欺などへの総合対策を2026年6月をめどに策定すると表明しています。SNS事業者への削除依頼、国際共同捜査、被害者支援の3つが柱になる見通しです。
プラットフォーム側の責任を強化する方向で議論が進んでいます。広告審査の厳格化や、本人確認を伴う広告主登録などが論点に挙がっています。
利用者ができる広告通報の具体的な手順
各SNSには通報ボタンが用意されています。
- Instagram:投稿右上の「…」から報告
- X:投稿右上の「…」から報告
- YouTube:広告右上の情報アイコンから報告
- Facebook:投稿右上の「…」から報告
通報数が多い広告ほど、プラットフォーム側で優先的に審査されます。1人ひとりの通報が、次の被害者を減らす行動になります。
詐欺グループの拠点と捜査の見通しはどうなっているか?
最後に、捜査の見通しを確認しておきます。海外拠点という構造、警察庁の国際共同捜査、長期化しやすい理由を見ていきます。被害者の心情として「捕まるのか」という疑問は欠かせません。
海外を拠点とする犯行グループが多いとされる背景
SNS型投資詐欺の犯行グループは、東南アジアなど海外を拠点としているケースが多いと指摘されています。現地に集約された詐欺拠点で、複数の日本人を相手にやり取りを行う形態です。
国外にサーバーや人員を置くことで、日本の警察の直接捜査が及びにくくなります。被害者と詐欺師が同じ国にいないケースが大半を占めているのが現状です。
警察庁が進める国際共同捜査の動き
警察庁は海外捜査機関との連携を強化し、SNS型投資詐欺に対する国際共同捜査を進める方針を打ち出しています。サイバー犯罪での実績がある国際協力枠組みを活用する形です。
送金経路が暗号資産を経由している場合、ブロックチェーン解析を含む追跡が行われます。捜査の進展には時間がかかるものの、検挙事例は少しずつ積み上がっています。
捜査が長期化しやすい構造的な理由
国際共同捜査には司法手続きや言語の壁があり、進行が遅くなりがちです。さらに犯行グループは複数の国にまたがり、役割が分散しています。
- 送金口座の名義人と実行犯が別人
- 拠点国と被害発生国が異なる
- 資金洗浄のために複数国を経由する
こうした構造が、被害者から見て「捜査の進捗が見えにくい」状況を生んでいます。短期間での全額回収は難しいことを前提に、自衛と通報を優先することが現実的です。
著名人を語った偽広告に騙されないための事前チェックとは?
事前のチェックがあれば、入り口で被害を止められます。本人公式アカウント、振込先口座、投資アプリの3点について、確認手順を具体的に紹介します。覚えてしまえばすぐに使えます。
広告に出ている人物の公式アカウントを確認する手順
広告で著名人の名前を見たら、次の手順で本人発信かを確認します。
- 名前で検索し、公式と明示されているアカウントを開く
- 認証マークの有無を確認する
- 直近の投稿に同じ内容の発信があるかを見る
本人が同じ内容を発信していなければ、広告は偽物と判断して問題ありません。判断に1分もかからない作業です。
振込先口座の名義と業者名の一致を確認する重要性
投資業者に振り込む場合、口座名義は業者名(法人名)であるのが普通です。個人名義の口座を指定された時点で、強い警戒が必要になります。
振込のたびに口座が変わる、海外口座を指定される、こうした場合は中断が原則です。1度立ち止まって、家族や警察相談電話に確認してから動いても遅くありません。
投資アプリが金融庁登録業者のものかを確認する方法
スマホにインストールするよう促されたアプリがある場合、提供元を確認します。
- 金融庁の「金融商品取引業者等登録一覧」を検索する
- 暗号資産取引であれば「暗号資産交換業者登録一覧」を確認する
- 提供元の運営会社が一覧に存在するかをチェックする
一覧に名前がない業者のアプリは、利用してはいけません。正規の業者であれば必ず登録があります。
愛知県や周辺地域で利用できる相談窓口はどこか?
最後に、実際に困ったときの連絡先を整理しておきます。警察、消費生活センター、愛知県警の独自情報という3つの軸でまとめます。電話番号は覚えておくと安心です。
警察相談専用電話#9110の使い方
9110は全国共通の警察相談専用電話です。110番ほど緊急ではないけれど、警察に相談したい内容を扱います。
詐欺かどうか判断に迷う段階でも利用可能です。本人だけでなく、家族からの相談も受け付けています。営業時間は都道府県によって異なるため、初回は時間帯に余裕を持って連絡しましょう。
消費者ホットライン188で受けられる相談内容
消費者ホットライン188(いやや)は、最寄りの消費生活センターにつながる電話番号です。詐欺被害だけでなく、契約トラブル、悪質商法、被害回復に関する相談を受け付けています。
生活再建に向けたアドバイスや、二次被害を防ぐための情報提供が中心です。警察と並行して連絡しておくと、選択肢の幅が広がります。
愛知県警公式サイトで公開されている相談先
愛知県警の公式サイトには、SNS型投資詐欺に関する注意喚起ページと相談窓口の案内が掲載されています。地域別の警察署連絡先も検索可能です。
地域に密着した情報を入手したい場合、まずは県警のサイトを確認することをおすすめします。各警察署のサイバー犯罪相談窓口や、生活安全課への連絡先がまとまっています。
よくある質問
事件に関してよく寄せられる疑問を5つ取り上げます。報道されている範囲で答えられるものを中心にまとめました。
被害に遭った80代男性の名前は公表されているのですか?
被害者の氏名や住所などの個人情報は公表されていません。プライバシー保護の観点から、被害者の特定につながる情報は伏せられるのが通例です。
今後の続報でも、被害者本人を特定する情報は明かされない可能性が高いと考えられます。
名前を悪用された著名人は誰だと報じられていますか?
2026年5月20日時点の主要報道では、悪用された著名人の具体的な名前は明らかにされていません。捜査上の理由や、当該著名人側の事情で伏せられている可能性があります。
SNS型投資詐欺では、有名な経営者、投資家、テレビ出演者の名前が悪用されるケースが繰り返し報告されています。今後の続報で明らかになる可能性はあります。
8億7000万円はどのくらいの期間で詐取されたのですか?
報道によれば、男性は2026年に入って広告にアクセスし、2026年5月までに複数回送金しています。期間としてはおおむね数カ月にわたります。
短期間で集中的に送金が行われたことが、被害額の大きさにつながっています。
詐欺グループは逮捕されているのですか?
2026年5月20日時点で、犯行グループの逮捕は公表されていません。愛知県警が捜査を進めている段階です。
SNS型投資詐欺は海外拠点のグループが関与しているケースが多く、検挙には時間がかかる傾向があります。
同じような広告を見かけたらどこに通報すればよいですか?
広告を配信しているプラットフォーム(Instagram、YouTube、Xなど)の通報機能を使うのが最初の一歩です。あわせて警察相談専用電話#9110に情報提供できます。
通報した相手に通知が届くことはなく、安心して利用できます。1件の通報が次の被害者を減らす行動になります。
まとめ
愛知県の80代男性が2026年5月に表面化したSNS型投資詐欺で8億7000万円を失った事件は、ネット広告という日常の入り口から始まりました。著名人の名前、LINEのグループチャット、偽の投資アプリ。これらの組み合わせが、1人の高齢者から県内過去最高額を引き出す装置として機能しています。被害の規模だけが特別なのではなく、入り口は誰の目の前にも開かれている点が本件の本質です。
今日からできる行動は、家族との会話を1つ増やすことです。著名人広告を見たら本人公式アカウントを開く、振込先が個人名か業者名かを確かめる、投資アプリは金融庁登録一覧で確認する。3つの習慣を共有しておくだけで、本件のような被害は入り口で止まります。被害に気づいた場合は#9110と取引銀行への連絡を最優先にし、リカバリー詐欺による二次被害を避ける視点も忘れないようにしましょう。
参考文献
- 「SNS型投資詐欺」-「警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ」
- 「SNSを悪用した投資・ロマンス詐欺の被害発生状況等について」-「警察庁」
- 「投資詐欺で8億7000万円被害 愛知の80代男性、SNS使い」-「佐賀新聞(共同通信配信)」
- 「80代男性8.7億円詐欺被害 愛知 指示に従い『投資アプリ』で送金、利益が出ているように表示」-「読売新聞オンライン」
- 「SNS型投資、ロマンス詐欺被害が過去最悪 『ニセ警察』急増、AI活用で手口巧妙化も」-「時事ドットコム」
- 「その広告、ホンモノ? 『SNS型投資詐欺』の手口と対策」-「LINEヤフー株式会社」
- 「SNS型投資詐欺に注意!!」-「埼玉県警察」
- 「金融商品取引業者等登録一覧」-「金融庁」
- 「SNS投資詐欺 多額の被害。実態解明と対策急げ」-「公明党」