北海道の渡島地方で、70代と80代の女性2人が計3777万円をだまし取られました。電話をかけてきたのは、東京の警察官や検察官を名乗る男たちです。指示されるまま口座へお金を振り込み、被害に気づいたときには手遅れでした。
なぜ警察官を名乗る電話を信じてしまうのでしょうか。この記事では、渡島地方で起きた3777万円詐欺被害の内容を時系列で整理します。あわせて、電話の中身や手口の仕組みも警察発表と報道をもとに解説します。
渡島地方で起きた3777万円詐欺事件とは?
まず事件の全体像から見ていきます。どこで、誰が、いくら被害に遭ったのか。基本の情報を最初に押さえておくと、後の手口解説が理解しやすくなります。
事件の概要(発生日・場所・被害額)
事件が起きたのは北海道の渡島地方です。警察が被害を公表しました。
被害の内訳は次のとおりです。2人の被害額を合わせると計3777万円にのぼります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発生地域 | 北海道渡島地方 |
| 被害者 | 70代女性・80代女性の2人 |
| 被害総額 | 計3777万円 |
| 犯人が名乗った肩書き | 東京の警察官・検察官 |
| 金銭の交付方法 | 指定口座への振り込み |
被害に遭ったのは誰か(70代・80代女性2人の属性)
被害者は渡島地方に住む70代と80代の女性です。2人は別々の被害者として発表されています。同じ時期に、同じ地域で、同じ型の電話がかかっていたことになります。
警察庁の統計でも、固定電話への詐欺電話は60代から80代が主な標的です。在宅時間が長い高齢の女性は、犯人側から見て「電話がつながりやすい相手」なのです。
警察はどの署がどう発表したのか
渡島地方の事件は、北海道警察函館方面本部の管内で扱われます。
警察は特殊詐欺事件として捜査しています。報道は警察発表にもとづくものです。この記事も、その一次情報を出発点にしています。
東京の警察官・検察官を名乗る男らとは何者?
犯人はなぜ「東京の」警察官を名乗ったのでしょうか。地元の警察ではなく、遠くの警察を持ち出すことには理由があります。ここでは名乗りの仕組みを分解します。
「東京の警察官」を名乗る意味
東京の警察官を名乗ると、被害者は確認しにくくなります。地元の警察署なら、直接出向いて確かめられます。遠方だとそれができません。
もうひとつ理由があります。「東京で摘発した事件にあなたの口座が関係している」という筋書きが作りやすいのです。距離の遠さそのものが、ウソを見破られないための道具になっています。
警察官から検察官へ電話が代わる二段構えの役割
この手口では、途中で電話の相手が検察官役に代わることがあります。警察官役が「事件の説明」を担当し、検察官役が「お金の指示」を出す分担です。
登場人物が増えると、話に現実味が出ます。組織ぐるみで演じることで「本当に捜査されている」と思い込ませるわけです。役割を分けた劇のような構造だと知っておくと、電話の異常さに気づきやすくなります。
名乗った部署・肩書きに実在性はあるのか
犯人は実在する警察署名や部署名を使うことがあります。警視庁は、代表電話や末尾0110の番号を偽装表示させる手口を確認しています。番号が本物に見えても、発信元が本物とは限りません。
警察官の氏名まで実在の人物をかたる例もあります。肩書きや番号の「それらしさ」は、信用の根拠にならないのです。
2人の女性はどんな電話を受けたのか?時系列で解説
ここからは被害の流れを追います。1本の電話が、どうやって3777万円の振り込みにつながったのか。順を追って見ると、手口の巧妙さが浮かび上がります。
最初の電話から振り込みまでの流れ
入口は電話です。警察官を名乗る男が「あなたの口座が犯罪に使われている」といった話を持ちかけます。同種事件では、ここから話が段階的に深刻になっていきます。
一般的な流れは次のとおりです。
- 警察官役が「事件への関与」を告げる
- 検察官役などが引き継ぎ、話を具体化する
- 「調査のため」と称して口座への振り込みを指示する
最初の電話から振り込みまで、被害者は一度も犯人と対面していません。すべてが電話越しに進むのがこの型の特徴です。
犯人側が使った具体的な文言
同種の事件で確認されている文言には共通点があります。「口座が犯罪に利用されている」「このままでは逮捕される」「身の潔白を証明するために協力してほしい」。どれも不安と正義感を同時に刺激する言葉です。
ただし「捜査への協力」を口実にお金を動かさせる構図は、警察庁が繰り返し公表している型と一致します。
複数回の振り込みに至った経緯
被害額が3777万円まで膨らんだ背景には、振り込みの反復があるとみられます。1回で終わらず、「別の口座も調べる必要がある」などと理由を重ねるのが常套手段です。
一度お金を出すと、後戻りが難しくなります。「ここでやめたら今までの協力が無駄になる」という心理が働くためです。回数を重ねさせる設計そのものが、手口の一部といえます。
なぜ「振り込み」を依頼されたのか?
現金を家まで取りに来る詐欺もあります。しかし本件は振り込み型でした。この違いには、犯人側の明確な計算があります。
現金手渡し型との違い
現金手渡し型は、受け子が被害者宅を訪れます。顔を見られ、防犯カメラにも映ります。犯人にとって逮捕のリスクが高い方法です。
振り込み型は違います。犯人は電話だけで完結できます。姿を一切見せずにお金を奪える点が、振り込み型が選ばれる最大の理由です。
口座振込型の被害が高額化しやすい理由
警察庁の集計では、振込型の被害は1件あたりの金額が大きい傾向にあります。ATMや窓口の限度額を避け、複数回に分けて送金させるからです。
ニセ警察詐欺の既遂1件あたりの被害額は、令和7年の暫定値で約910.8万円でした。ほかの特殊詐欺の約263.3万円と比べると、3倍を超えます。「捜査」を名目にすると、口座の残高ごと狙えることが金額を押し上げています。
振込先口座はどう用意されるのか
振込先には、他人名義の口座が使われます。闇バイトで売買された口座や、別の詐欺被害者の口座が悪用される例が確認されています。
お金は入金後すぐに移動されます。複数の口座を経由させ、暗号資産に換えられることもあります。追跡を難しくするための仕組みが、あらかじめ組み込まれているのです。
被害額3777万円はどれくらい大きいのか?
3777万円という数字を、ほかの事件と比べてみます。位置づけが分かると、この事件の深刻さと、全国的な傾向の両方が見えてきます。
道内の特殊詐欺被害額との比較
北海道内では、警察官を名乗る手口の高額被害が続いています。札幌市西区では60代女性が約2億5000万円をだまし取られ、道内の特殊詐欺で過去最高額と報じられました。
それと比べれば本件は小さく見えるかもしれません。それでも個人の資産として3777万円は老後資金の大半に相当する規模です。金額の大小ではなく、生活基盤が奪われたという点が本質です。
全国で相次ぐ警察官かたり詐欺の被害規模
警察庁の暫定値によると、令和7年の特殊詐欺全体の被害額は約1414億円でした。前年からほぼ倍増しています。この増加を押し上げた主因が、警察官をかたるニセ警察詐欺です。
愛媛県では80代女性が約12億円を送金した事例も発表されています。渡島地方の事件は、この全国的な流れの中で起きた1件と位置づけられます。
1件あたり被害額が上がっている背景
被害単価が上がった理由は、手口の変化にあります。かつてのオレオレ詐欺は「示談金」など名目に上限がありました。ニセ警察詐欺は「資産全体の調査」を口実にするため、上限がありません。
インターネットバンキングの普及も影響しています。窓口を通さず高額を動かせる環境が、被害の大型化と結びついているのです。
渡島地方とはどこ?なぜこの地域で起きたのか
渡島地方と聞いて、場所がすぐ浮かぶ人は道外では多くありません。地域の輪郭をつかむと、「都市部だけの犯罪ではない」ことが実感できます。
渡島地方(函館圏)の位置と範囲
渡島地方は北海道の南西部にあります。中心都市は函館市です。渡島総合振興局の管内には、北斗市や七飯町、松前町、知内町などが含まれます。
青函トンネルで本州とつながる、北海道の玄関口にあたる地域です。人口は函館圏に集中し、周辺には小規模な町が点在しています。
函館方面本部管内の特殊詐欺発生状況
渡島地方の治安を担うのは、北海道警察函館方面本部です。管内では特殊詐欺の被害と予兆電話が継続して確認されています。地元自治体と警察が連名で注意を呼びかける取り組みも行われてきました。
そうした呼びかけが続く中でも、本件のような高額被害は発生しました。注意喚起が届いている地域でも、電話1本で数千万円が動いてしまう。ここにこの犯罪の怖さがあります。
都市部以外でも被害が起きる理由
特殊詐欺の犯人は、電話番号のリストをもとに全国へ架電します。かける側にとって、相手が札幌でも渡島の町でも手間は同じです。
むしろ地方には固定電話の利用世帯が多く残っています。犯人にとって地方は「電話がつながる確率が高い市場」です。人口の少なさは、狙われにくさを意味しません。
70代・80代女性が狙われやすいのはなぜ?
被害者の年代には、はっきりした偏りがあります。理由は判断力の問題ではありません。犯人側の設計が、高齢の女性に届きやすくできているのです。
固定電話への架電と在宅率の関係
固定電話は日中に自宅で受けるものです。日中に在宅している割合が高いのは、退職後の高齢層です。犯人の電話は、この生活パターンを前提にかけられています。
警察庁の分析でも、固定電話経由の被害は60代から80代に集中しています。電話という入口の性質そのものが、被害者の年代を決めているといえます。
「捜査」「逮捕」という言葉が判断力を奪う仕組み
警察や検察という言葉には、従うべきものという感覚が結びついています。まじめに生きてきた人ほど、この感覚は強く働きます。
そこへ「逮捕」という言葉が加わります。恐怖で頭が真っ白になった状態では、金額の異常さを冷静に計算できません。犯人は知識の不足ではなく、感情の動きを突いているのです。
家族に相談しにくくなる心理誘導
犯人は「捜査情報だから誰にも話さないで」と口止めします。秘密を守ることが捜査協力だと思わされるため、被害者は自ら孤立していきます。
家族に話せば、たいてい途中で詐欺だと気づけます。相談の回路を最初に断つことが、この手口の核心部分です。長期間、誰にも知られずに振り込みが続くのはこのためです。
ニセ警察詐欺とは?本件の手口の位置づけ
本件のような手口には、統計上の名前がついています。「ニセ警察詐欺」です。言葉の定義を知ると、警察がこの手口をどれだけ警戒しているかが分かります。
ニセ警察詐欺の定義と統計上の扱い
ニセ警察詐欺は、警察官などをかたって捜査名目でお金をだまし取る手口を指します。警察庁は令和7年1月からこの手口の統計を開始しました。被害の急増を受けて、独立した分類が必要になったのです。
北海道警も令和8年4月から、統計の類型に「ニセ警察官詐欺」を加えました。本件は、まさにこの新設分類の典型例にあたります。
番号偽装・SNS誘導など併用される演出
ニセ警察詐欺では、電話以外の小道具も使われます。着信画面に警察署の番号を偽装表示させる手口。SNSのビデオ通話で偽の警察手帳や逮捕状を見せる手口。どれも「本物らしさ」を積み上げる演出です。
ただ、見た目の証拠を次々と示してくること自体が、この詐欺の型だと覚えておく価値があります。
本件が典型例とされるポイント
本件には、ニセ警察詐欺の要素がそろっています。警察官と検察官の二段構え。捜査名目での振り込み指示。高齢女性への架電。振り込み型による高額化。
つまり渡島地方の事件は、特殊な例外ではありません。全国で毎日起きている型が、そのまま地方の町に届いたという見方が正確です。
だまし取られたお金は戻ってくるのか?
被害者や家族が最も知りたいのは、お金の行方でしょう。制度上の道はあります。ただし現実には高い壁もあります。両方を正直に整理します。
振り込め詐欺救済法による返金の仕組み
振り込め詐欺救済法という制度があります。犯行に使われた口座を金融機関が凍結し、残っていたお金を被害者に分配する仕組みです。
手続きは、警察への被害届と金融機関への連絡から始まります。口座にお金が残っていれば、被害額に応じた分配を受けられます。制度としての救済ルートは用意されているのです。
口座凍結と被害回復のハードル
問題は、お金が口座に残っているかどうかです。犯人は入金を確認すると、すぐに引き出すか別口座へ移します。凍結が間に合わなければ、分配の原資はありません。
被害の発覚が遅れるほど、返金の可能性は下がります。口止めによって発覚を遅らせる手口は、返金を防ぐ仕掛けとしても機能しているわけです。
犯人検挙と弁済の見通し
犯人が検挙されれば、刑事手続きとは別に損害賠償を求める道が開けます。ただし実行役の受け子やかけ子には、弁済する資力がないことがほとんどです。
主犯格は海外拠点にいる例も報告されています。全額回復は容易ではないというのが、同種事件の現実です。だからこそ被害の記録と早期の届け出が重みを持ちます。
事件はどう捜査されているのか
最後に、捜査の側から事件を見ます。警察が何を調べ、どこにたどり着こうとしているのか。捜査の枠組みを知ると、続報の読み方が変わります。
警察が公表している捜査状況
警察は本件を特殊詐欺事件として捜査しています。公表されているのは被害の概要までで、捜査の詳細は明かされていません。これは証拠保全のための通常の対応です。
振込先口座の名義人の特定は、捜査の最初の糸口になります。口座の売買ルートをたどることで、組織の輪郭が見えてくるからです。
かけ子・受け子など役割分担の解明
特殊詐欺の組織は分業制です。電話をかける「かけ子」、口座を用意する調達役、お金を引き出す「出し子」。互いの素性を知らないまま動く構造になっています。
この構造が捜査を難しくします。末端を検挙しても、指示役までの経路が切断されていることが多いのです。全国の警察は特殊詐欺連合捜査班という枠組みで、県境を越えた追跡を進めています。
同種事件との関連性の調べ
本件では2人が同時期に被害に遭いました。同じグループが渡島地方のリストに沿って架電した可能性が考えられます。警察は他地域の事件との共通点も照合しているとみられます。
使われた電話番号や口座が他県の事件と重なれば、組織の特定に近づきます。1つの地方の事件が、全国の捜査網の一部として扱われるのがこの犯罪の捜査です。
よくある質問(FAQ)
事件はいつ・どこで発生しましたか?
北海道の渡島地方で発生しました。渡島地方は函館市を中心とする道南のエリアです。
警察発表をもとに各報道機関が伝えています。
犯人はどんな肩書きを名乗りましたか?
東京の警察官と検察官を名乗る男たちでした。複数の人物が役割を分けて電話に登場しています。
警察官役が事件の話をつくり、検察官役などがお金の指示を出す構成です。肩書きの豪華さは信用の根拠になりません。
被害額3777万円はどうやってだまし取られましたか?
現金の手渡しではなく、口座への振り込みでした。捜査への協力を装い、指定口座へ送金させる手口です。
複数回に分けて振り込ませることで、被害額が膨らんだとみられます。犯人は一度も被害者の前に姿を見せていません。
渡島地方とは北海道のどのあたりですか?
北海道の南西部、道南と呼ばれるエリアです。中心都市は函館市で、北斗市や七飯町などが含まれます。
青函トンネルで本州と接続する地域です。都市部から離れた町でも、詐欺の電話は同じように届きます。
被害金が返ってくる可能性はありますか?
振り込め詐欺救済法にもとづく分配の制度があります。犯行口座を凍結し、残高を被害者へ返す仕組みです。
ただしお金が引き出された後では、分配の原資が残りません。届け出の早さが返金の可能性を左右します。
まとめ:渡島地方3777万円詐欺事件が示すもの
渡島地方の事件は、ニセ警察詐欺が大都市だけの犯罪ではないことを示しました。電話回線がある場所なら、どの町でも同じ被害が起こり得ます。警察庁が令和7年から統計を新設し、北海道警も令和8年に分類を追加した流れは、この手口が全国の課題になった証拠です。
本記事で触れられなかった論点もあります。固定電話の番号リストがどう流通しているのか。海外の詐欺拠点で日本人がどう働かされているのか。被害の背景には、こうした供給側の構造があります。まずは今日、離れて暮らす家族と「警察を名乗る電話があったら一度切って折り返す」という約束を1つ交わしてください。それが本件から引き出せる、最も具体的な行動です。
参考文献
- 「【特殊詐欺】東京の警察官、検察官を名乗る男らが振り込みを依頼 渡島地方の70代・80代女性2人が計3777万円の巨額被害」-「TBS NEWS DIG(HBC北海道放送)」
- 「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」-「警察庁」
- 「警察官等をかたる詐欺」-「警視庁」
- 「ニセ警察詐欺に注意! #ニセ警察詐欺」-「警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ」
- 「特殊詐欺事件発生状況」-「北海道警察」
- 「2億5000万円詐欺被害 道内最高額 北海道」-「ぼうはん日本」