FBI・ドバイ警察・中国公安による仮想通貨詐欺の合同摘発は、米国司法省が「前例のない国際協力」と表現した史上初の3カ国連携作戦でした。2026年4月29日に発表されたこの摘発では、276人以上が逮捕され、9カ所の詐欺拠点が一斉に解体されています。
仮想通貨詐欺の被害は日本人にとっても他人事ではありません。SNSやマッチングアプリを通じた「投資勧誘」型の手口は国境を問わず広がっています。今回の事件の全体像、逮捕された人物の役割、そして自分が被害に遭わないために知っておくべきことを順番に説明します。
今回の一斉摘発とは何か?
2026年4月29日、米国司法省(DOJ)が発表した今回の摘発は、規模・連携ともに過去に例がない作戦でした。3カ国の捜査機関が同時に動き、複数の詐欺拠点を解体した点が特徴です。
事件の概要と発表された日時
摘発が発表されたのは、2026年4月29日です。
米国司法省(DOJ)の公式プレスリリースにより、世界規模の仮想通貨詐欺グループへの一斉摘発が明らかになりました。
逮捕者は276人以上、解体された詐欺拠点は9カ所に上ります。
被害の対象は主にアメリカ国内の被害者で、捜査機関はFBIのインターネット犯罪申告センター(IC3)に寄せられた被害届を分析して捜査を進めました。米国内の被害者から仮想通貨への入金を騙し取った疑いで、複数の被告人が起訴されています。
関与した3カ国の捜査機関はどこか
今回の摘発には、以下の機関が参加しました。
| 機関 | 国・地域 | 役割 |
|---|---|---|
| FBI(連邦捜査局) | アメリカ | 捜査開始・起訴状作成 |
| ドバイ警察 | UAE | 作戦の主導・現地逮捕 |
| 中国公安部 | 中国 | 連携捜査 |
| タイ王国警察 | タイ | 被告人1名の逮捕 |
主導したのはUAE内務省傘下のドバイ警察です。
今回の作戦はドバイ警察が先導し、FBIが捜査情報を提供する形で連携が組まれました。
摘発された9拠点はどの国・地域にあったのか
米司法省の発表では、摘発された9カ所の拠点について具体的な所在国は明記されていません。
ただし、逮捕された被告人の国籍(ミャンマー、インドネシア)と、今回の作戦が東南アジアを拠点とする仮想通貨詐欺グループを対象としていたことから、拠点の多くは東南アジア圏にあったとみられています。
起訴状に記載された3つの組織(Ko Thet Company、Sanduo Group、Giant Company)がそれぞれ複数の詐欺拠点を運営していたとされています。
なぜFBI・ドバイ・中国が異例の3カ国連携を組めたのか?
仮想通貨詐欺の摘発でこれほど多くの国が一度に動いたのは初めてのことです。政治的・外交的な背景を含め、この連携がどのように実現したのかを整理します。
「Operation Tri-Force Sentinel」という作戦名の意味とは?
今回の作戦の正式名称は「Operation Tri-Force Sentinel(オペレーション・トライフォース・センチネル)」です。
「Tri-Force(3つの力)」はFBI・ドバイ警察・中国公安の3機関を指し、「Sentinel(見張り)」は詐欺グループへの監視・包囲を意味します。
この名称はドバイ警察が公式に発表しています。
作戦名が公表されたこと自体が、今回の連携が計画的かつ長期的に準備されたものであったことを示しています。
3機関がそれぞれ担った役割の違いとは?
各機関の役割は明確に分かれていました。
- FBI:2025年にFBI San Diegoが捜査を開始し、被害者の申告データ分析と被告人の特定を担当。MetaなどSNS企業から情報提供を受けた
- ドバイ警察:作戦を主導し、275人を現地で逮捕。3名は米国の起訴状に連動した形で身柄を確保
- 中国公安部:越境詐欺犯罪への対応として連携し、情報共有を行った
- タイ王国警察:逃走していた被告人のWiliang Awangをタイ国内で逮捕
FBI San Diego捜査官(Mark Remily特別捜査官)は、「詐欺グループがどこに拠点を置こうとも、FBIは追い続ける」と述べています。
米・UAE・中国の連携が実現できた背景とは?
なぜ、通常は外交的に距離のあるアメリカと中国が連携できたのか。
これには共通の利害があります。詐欺グループはアメリカ人だけでなく、中国人も被害ターゲットにしていたからです。
詐欺拠点はUAEやタイを「資金の出口」として利用していたため、ドバイも摘発に積極的に動く理由があったのです。
米国司法省次官補(A. Tysen Duva)は「詐欺センターはどの国にも歓迎されないという国際的なコンセンサスが今回の逮捕に反映されている」と述べています。
逮捕された276人は何をしていたのか?
276人という数字は大きいですが、米国の裁判所で起訴されたのは一部です。被告人たちの素性と役割を具体的に確認しておきましょう。
逮捕された被告人の国籍・年齢・役割とは?
米国カリフォルニア州南部地区(サンディエゴ)の連邦裁判所で起訴された被告人は以下の通りです。
| 氏名 | 年齢 | 国籍 | 役割 |
|---|---|---|---|
| Thet Min Nyi | 27歳 | ミャンマー | Ko Thet Companyのマネージャー・採用担当 |
| Wiliang Awang | 23歳 | インドネシア | Sanduo Groupの関係者 |
| Andreas Chandra | 29歳 | インドネシア | Giant Companyの関係者 |
| Lisa Mariam | 29歳 | インドネシア | Giant Companyの関係者 |
| 共犯者(逃亡中) | 不明 | 不明 | 逃亡中・国際手配 |
Thet Min NyiはKo Thet Company(通称「Pixy」)のマネージャーとして詐欺拠点の運営と人員採用に関与したとされています。
Ko Thet Company・Sanduo Group・Giant Companyとはどんな組織か
今回起訴状に記載された3つの「会社」は、詐欺拠点を運営していたとされる組織です。
- Ko Thet Company(コテット・カンパニー):通称「Pixy」。Thet Min Nyiが管理していたとされる
- Sanduo Group(三多グループ):Wiliang AwangとAnthony名義の逃亡中の共犯者が関与
- Giant Company(ジャイアント・カンパニー):Andreas ChandardとLisa Mariamが関与
いずれの組織も「会社」という体裁を装っていましたが、実態は仮想通貨投資詐欺の運営拠点でした。
被害者には本物そっくりの偽投資プラットフォームへの入金を促し、資金を奪っていたとされています。
逃亡中とされる2人の共犯者の状況とは?
起訴状には、現時点でまだ逃亡中の共犯者が2名含まれています(本記事公開時点)。
米司法省は国際手配を継続しており、捜査は引き続き進行中です。
この点は重要です。今回の摘発は「終わった事件」ではなく、捜査が現在も続く進行中の案件です。
詐欺の具体的な手口とは?「ピッグバッチャリング詐欺」を解説
今回の事件の中核にある手口が「ピッグバッチャリング詐欺(豚の解体詐欺)」です。名前は聞いたことがなくても、手口は日本でも広がっています。
ピッグバッチャリング詐欺とはどんな犯罪か
「ピッグバッチャリング(pig butchering)」は中国語の「殺猪盤(シャーチューパン)」を訳した言葉です。
「出荷前に豚を太らせ、最後に屠殺する」というプロセスが詐欺の手口と重なることから名付けられました。
詐欺師はまず被害者と「友人」や「恋人」として信頼関係を築き、十分に信頼させてから「お得な投資話」に誘導します。
SNSやマッチングアプリで突然メッセージを送ってくる見知らぬ相手が、これに当たるケースがあります。
偽の投資プラットフォームをどのように構築していたのか
被害者が入金するよう誘導されたのは、本物そっくりに作られた偽の仮想通貨投資プラットフォームです。
- 画面上では利益が表示され、「儲かっている」と錯覚させる
- 少額の出金を一度だけ許可し、信頼感を高める
- その後、「もっと入金すれば更に利益が出る」と説得する
- 被害者がローンや借金をして入金した段階で、詐欺師が資金ごと消える
プラットフォーム上のすべての数字は架空であり、詐欺師が操作していました。
被害者はなぜ気づけなかったのか
被害者が気づけないのは、詐欺の準備に数週間から数カ月がかかるためです。
急ぎのセールスではなく、日常会話・感情的なつながりを積み上げた上で投資話を切り出します。
研究機関Global Anti-Scam Organizationのデータによると、被害者1人あたりの平均被害額は約177,000ドルに上ります。
騙されやすいのは「お金に詳しくない人」ではなく、医師・エンジニア・金融関係者なども含まれています。
捜査はどのように始まり、どう展開したのか?
FBI San Diegoが捜査に着手したのは2025年のことです。アメリカ国内から始まった捜査が、どのように3カ国連携へと発展したのかを追います。
FBI San DiegoがいつどこでどのようにΗ端緒を掴んだのか
2025年、FBI San DiegoはHomeland Security(国土安全保障)タスクフォースの一環として捜査を開始しました。
仮想通貨投資詐欺を運営していた複数の会社と個人を特定したことが端緒です。
捜査員はFBI IC3に寄せられた被害申告を分析し、被害者へのインタビューと仮想通貨の資金追跡を並行して進めました。
仮想通貨の取引記録は「消えない証拠」であり、詐欺グループの資金の動きを追跡できたことが摘発の決め手の一つでした。
FacebookなどSNS企業の情報提供がどう役立ったのか
今回の捜査では、Meta Platforms(FacebookとInstagramの親会社)が情報提供を行ったことが米司法省の発表で明示されています。
詐欺師たちはSNSで被害者との「関係構築」を行っていたため、アカウント情報やメッセージ履歴がそのまま証拠になりました。
SNS企業と捜査機関の連携は、このタイプの詐欺への対応で重要な役割を担うようになっています。
IC3(インターネット犯罪申告センター)への被害届の活用とは?
IC3はFBIが運営するオンライン犯罪申告窓口(ic3.gov)です。
今回の摘発につながった被害申告の多くが、IC3経由で集まっています。
被害申告が積み重なることで、捜査機関が同一グループの犯行パターンを認識できるようになります。
被害を受けた場合や疑わしい接触があった場合は、IC3への申告が捜査につながる直接的な手段です。
被告人に問われている罪状と刑罰の重さとは?
今回の起訴状には、米国連邦法上の重大な罪状が含まれています。日本ではなじみが薄い罪名ですが、内容を理解しておくことが重要です。
電信詐欺共謀罪とはどういう罪か
「電信詐欺(Wire Fraud)」は、電話・インターネット・電子メールなどの通信手段を使った詐欺行為を指す米国連邦犯罪です。
「共謀(Conspiracy)」が加わることで、詐欺を計画・実行したグループ全体を一括して訴追できます。
電信詐欺共謀罪の最高刑は懲役20年、罰金は250,000ドルまたは利益・損害額の2倍のいずれか大きい方です。
マネーロンダリング共謀罪の最高刑はどれほどか
Thet Min Nyiに対しては電信詐欺共謀罪に加え、マネーロンダリング(資金洗浄)共謀罪も起訴されています。
マネーロンダリング共謀罪(米国法典第18条)の最高刑も懲役20年です。
罰金は500,000ドルまたは利益・損害額の2倍まで科せられます。
2つの罪状が重なることで、理論上の最大刑期は40年に及ぶ可能性があります。
資産没収(フォーフィーチャー)とはどういう措置か
Thet Min Nyiの起訴状には、犯罪で得た資産を国家が没収する「フォーフィーチャー(Criminal Forfeiture)」条項も含まれています。
仮想通貨で受け取った詐欺収益、資金洗浄に使った口座残高などが対象になります。
有罪が確定した場合、詐欺で得た資金のほぼすべてを失う可能性があります。
今回の摘発で実際にどれだけの被害が確認されているのか?
今回の事件の被害規模を、より広い文脈で見ると、仮想通貨詐欺がいかに巨大な問題になっているかが分かります。
米国内の被害者数と被害総額の現状
米司法省は「数百万ドル規模の被害」と述べるにとどまり、現時点では具体的な総額を公表していません。
捜査継続中であり、被害の全容はまだ確定していない状況です。
FBI IC3への申告を通じて全米各地の被害者が複数確認されており、捜査員は被害者への直接インタビューも行っています。
投資詐欺が全詐欺被害に占める割合とは?
FBIが公表した「2025年インターネット犯罪報告書」によると、仮想通貨投資詐欺は2025年に発生した詐欺関連事件の49%を占めています。
2025年の詐欺被害全体でも、投資詐欺の被害額は110億ドルを超えています。
詐欺の中でも仮想通貨投資詐欺は「最も損害が大きいカテゴリ」として分類されています。
FBI「Operation Level Up」で防いだ5億6000万ドルの詐欺とは?
「Operation Level Up」は、FBI San DiegoとフェニックスFBI支局が2024年に開始した別の仮想通貨詐欺対策プロジェクトです。
被害が発生する前に被害者候補者を特定して連絡する「事前通報型」アプローチが特徴です。
2026年4月時点で、約9,000名の被害者候補者へ通報を完了し、推定5億6200万ドルの被害を未然に防いでいます。
これは「逮捕して終わり」ではなく、「被害を止める」ことを優先した捜査の好例です。
詐欺拠点はどこで運営されていたのか?東南アジアとの関係
なぜミャンマーやカンボジアが詐欺の温床になっているのか。地理的・政治的な背景を知ると、今回の事件の構造が見えてきます。
ミャンマーやカレン州の詐欺コンパウンドとはどんな施設か
「スキャムコンパウンド(詐欺複合施設)」とは、詐欺業務を一カ所で行う大型施設です。
「テクノロジーパーク」「コールセンター」などの名目で建設されることが多く、外からは合法企業に見えることもあります。
ミャンマー東部カレン州のShwe Kokkoには、こうした施設が集中しています。
カレン州はカレン国民軍(KNA)の管理下にあり、ミャンマー政府の法執行が及びにくい「グレーゾーン」として機能してきました。
人身売買との関連はあるのか
詐欺コンパウンドでは、詐欺の「実行者」も被害者であるケースが多く確認されています。
国連の推計では、ミャンマーとカンボジアだけで200,000人以上が強制労働に従事させられているとされています。
「高収入の事務職」などと偽った求人広告で採用された後、コンパウンドに連行され、詐欺業務を強制される手口が報告されています。
今回逮捕されたThet Min Nyiはマネージャー兼「採用担当」として機能しており、このような強制労働ネットワークの維持に関わっていた疑いがあります。
摘発後も残る「Tai Chang詐欺ネットワーク」の脅威とは?
FBI San Diegoは今回の作戦とは別に、ミャンマーのカレン州を拠点とする別の詐欺組織「Tai Chang Scam Enterprise」の調査も継続中であることを発表しています。
今回の摘発が終わっても、東南アジアの詐欺インフラが消えたわけではありません。
拠点が摘発されると、別の地域に移転して操業を再開するケースが繰り返し確認されています。
国際的な仮想通貨詐欺摘発の広がりとは?
今回の作戦は単独ではなく、2026年に入ってからの摘発の流れの一部です。同時期に起きた別の摘発事例と合わせて見ると、国際的な動向が分かります。
今回の摘発と並行してヨーロッパで起きた別の摘発事件
今回の発表とほぼ同時期に、ヨーロッパでも5000万ユーロ規模の仮想通貨投資詐欺グループへの捜索・摘発が行われています。
2026年は複数の法執行機関が詐欺インフラそのものを標的にした摘発に本腰を入れている年です。
各国がスキャム対策に本腰を入れている背景とは?
被害規模の大きさが、各国政府を動かしています。
FBIの報告では2025年の米国内のサイバー犯罪被害総額は210億ドルを超えており、そのうち仮想通貨詐欺が最大のカテゴリです。
アメリカ財務省のOFAC(外国資産管理局)は2025年9月にカレン州の詐欺ネットワーク関連組織に制裁を科しており、金融面からの封じ込めも並行して行われています。
越境犯罪に対する国際捜査の限界と今後の課題
捜査機関が強調しているのは「個人ではなくインフラを標的にする」アプローチです。
ただし、コンパウンドを摘発しても、リーダーが逃亡・移転して活動を再開する事例が繰り返されています。
今回の逮捕でも2名の主要共犯者が現時点でまだ逃亡中であることは、越境犯罪への対応の難しさを示しています。
日本人が被害に遭うリスクとはどの程度か?
今回の事件はアメリカを標的にしたものですが、手口は言語を問わず通用します。日本でも同様の被害が報告されています。
日本でも報告されているピッグバッチャリング被害の実態
日本では「SNS型投資詐欺」として分類されるケースがこの手口に相当します。
警察庁の発表でも、SNSやマッチングアプリ経由の投資詐欺被害は増加傾向にあります。
被害者層は40〜50代が中心とされていますが、20〜30代の被害も増えています。
「知り合いから紹介された」「プロフィールが詳しかった」という理由で信頼してしまうケースが多い点は、海外の被害者とまったく同じパターンです。
SNS・マッチングアプリ経由の仮想通貨勧誘の見分け方
以下に該当する場合は警戒が必要です。
- 見知らぬ相手から突然メッセージが来て、しばらく日常会話が続く
- 相手が「仮想通貨で利益を出している」と話し始める
- 特定のプラットフォームへの登録・入金を勧めてくる
- 「今だけ」「早く決断して」などの急かす言葉がある
- 一度少額の「利益」を出金させ、その後大きな入金を求めてくる
プラットフォームの名称をSEC(米証券取引委員会)やFINRAのデータベースで検索することも有効な確認手段です。
怪しいと感じた場合の通報先と相談窓口
被害を受けた場合、または不審な勧誘を受けた場合の主な相談先は以下の通りです。
- 警察庁・都道府県警の相談窓口(#9110)
- 国民生活センター(0570-064-370)
- 金融庁の金融サービス利用者相談室(0570-016811)
- 海外詐欺グループへの送金が疑われる場合はFBI IC3(ic3.gov)への申告も可能
被害の規模にかかわらず、相談・申告することが犯罪グループへの対抗手段になります。
FAQ:よくある疑問
ピッグバッチャリング詐欺については、まだわかりにくい点が多くあります。特によく挙がる疑問をまとめました。
ピッグバッチャリング詐欺とロマンス詐欺は違うのか?
広義の「ロマンス詐欺」の一種ですが、ピッグバッチャリング詐欺はその先に「仮想通貨投資」への誘導という独自の手順があります。
ロマンス詐欺が「感情を利用してお金を送らせる」のに対し、ピッグバッチャリングは「偽の投資プラットフォームへの入金」という形をとります。
外から見ると「投資で損をした」ように見えるため、詐欺と気づきにくい点が特徴です。
仮想通貨取引所を通じた送金は取り戻せるのか?
残念ながら、一般的には非常に困難です。
仮想通貨取引は原則として取り消せず、詐欺グループはすぐに別のウォレットへ資金を移動させます。
ただし、FBIのIC3への申告後に捜査当局が資金凍結・没収を行ったケースも存在するため、被害直後の通報は意味があります。
逮捕された被告人はどの裁判所で裁かれるのか?
今回起訴された被告人は米国カリフォルニア州南部地区の連邦裁判所(サンディエゴ)で裁かれます。
被害者がアメリカ国内にいる場合、犯行拠点が海外でも米国連邦法による起訴が可能です。
これが今回のような国際摘発が有効な理由の一つです。
なぜ今まで取り締まりが難しかったのか?
主な理由は3つあります。
第1に、拠点が政府の統治が不安定な地域(ミャンマーのカレン州など)にあること。第2に、犯行者・被害者・資金の流れが複数の国にまたがること。第3に、詐欺組織が「会社」の体裁を取り、表向きは合法事業に見えることです。
今回のような多国間連携が必要な理由は、まさにこの複雑な構造にあります。
FBIのIC3に通報すれば本当に調査してもらえるのか?
IC3は捜査機関への正式な申告窓口であり、今回の摘発もIC3の申告データが捜査の基礎になっています。
全ての申告が個別に調査されるわけではありませんが、同一グループへの申告が積み重なると捜査対象として認識されます。
日本語での申告も受け付けているため、被害金額の多寡にかかわらず申告する価値はあります。
まとめ
FBI・ドバイ警察・中国公安による今回の摘発は、「仮想通貨詐欺はどの国にも逃げ場はない」という国際的なメッセージを発信しました。Operation Tri-Force Sentinelという作戦名が示す通り、3つの機関が連携して同時に動いた点はこれまでにない事例です。
見落とされがちな点がひとつあります。今回逮捕された276人の多くは「末端の実行者」であり、複合施設を所有・設計した組織の上部は依然として逃亡中または未起訴の状態です。FBI San Diegoが引き続き調査している「Tai Chang Scam Enterprise」の存在がそれを物語っています。
手口の構造は変わっていないため、今すぐできる自衛策は「見知らぬ相手からの仮想通貨投資の勧誘には乗らない」という一点に尽きます。怪しいと感じたら#9110または国民生活センター(0570-064-370)に相談してください。
参考文献
- “Coordinated Takedown of Scam Centers Leads to at Least 276 Arrests” – United States Department of Justice
- “276 Arrested In Operation Tri-Force Sentinel Global Bust” – The Cyber Express
- “Unprecedented US, China, Dubai Crypto Scam Crackdown Nets 276 Arrests” – Bitcoin.com News
- “Police dismantles 9 crypto scam centers, arrests 276 suspects” – BleepingComputer
- “Why Southeast Asia’s online scam industry is so hard to shut down” – PBS News
- “How Myanmar Became a Global Center for Cyber Scams” – Council on Foreign Relations
- “Treasury Sanctions Southeast Asian Networks Targeting Americans with Cyber Scams” – U.S. Department of the Treasury
- “Pig Butchering Scam: Signs, Examples & How to Protect Yourself” – Huntress
- “The 2025 Global Scam Landscape” – ScamWatchHQ