動画の概要欄にあったリンクを押しただけなのに、気づけばLINEで投資の話が進んでいる。そんな状況に心当たりはありませんか。富山市では50代の男性が、株のAI取引アプリを勧められて190万円を失いました。入口は投資動画の概要欄でした。
この記事では、株のAI取引アプリを使った詐欺の手口を、接触から出金不能までの順にたどります。どの時点で気づけたのか。偽アプリはどう確かめるのか。送金してしまったらどこへ連絡するのか。読み終えるころには、自分の状況に当てはめて判断できるようになります。
富山市の50代男性が190万円をだまし取られた事件とは?
まずは、実際に何が起きたのかを押さえましょう。被害にあったのは富山市の50代男性です。投資の動画を見ていただけの人が、約3か月後には190万円を失っていました。日付と金額を順に追うと、だまされていく道筋がはっきり見えてきます。
いつ・どこで発生した被害なのか?
発表したのは富山中央警察署です。2026年5月中旬、男性は動画閲覧サイトで投資関連の動画を見ていました。その概要欄にあったリンクが、すべての始まりです。
注目したいのは、接触から初回の送金まで約2か月あいている点。詐欺グループは、すぐにお金の話をしません。時間をかけて信用を積み上げてから、アプリを勧めてきます。「長くやり取りしているから安心」とは言えないわけです。
190万円はどのような順序で送金されたのか?
経過を表にまとめました。
| 時期 | 出来事 | 送金額 |
|---|---|---|
| 2026年5月中旬 | 動画の概要欄からLINE公式アカウントへ誘導される | なし |
| その後 | 元役員を名乗る人物を追加。投資グループLINEに招待される | なし |
| 7月7日 | 指定口座へ送金し、投資を開始 | 10万円 |
| 約1日後 | アプリ上に利益が表示される | なし |
| その後 | 追加で3回送金 | 20万円、100万円、60万円 |
| 8月3日 | 出金しようとするとアプリが起動しない | 合計190万円 |
最初は10万円。次が20万円。3回目で100万円に跳ね上がっています。金額の増え方に、この手口の特徴が表れています。
被害に気付いたきっかけは何だったのか?
8月3日、男性は利益を引き出そうとしました。ところがアプリが起動しません。ここで初めて、だまされていたと分かりました。
裏を返すと、出金を試すまでは気づけなかったことになります。画面の数字が増えている間は、疑う理由が見つからないからです。「引き出せるかどうか」が、本物と偽物を分ける境目になります。
動画の概要欄からLINEへ誘導される流れとは?
SNSの広告や著名人のなりすましが入口になる話は、よく知られるようになりました。今回の入口は動画の概要欄です。自分で選んで見た動画の下にあるため、広告よりも警戒がゆるみやすい場所といえます。リンクの先で何が起きるのか、順に見ていきます。
投資動画の概要欄リンクの先には何があるのか?
同種の勧誘では、概要欄に「無料で銘柄情報を配信中」「LINE登録で特典」といった案内が並びます。リンクを押すと、LINEの友だち追加画面が開きます。ここまでは、よくある情報発信者の導線と見分けがつきません。
警察庁のサイトにも、似た事例が載っています。NISAの解説動画の概要欄からグループチャットへ招待され、1億円以上を失ったケースです。動画の内容がまともでも、概要欄のリンク先まで安全とは限りません。
LINE公式アカウントが入口に使われる理由とは?
公式アカウントという名前から、LINE社のお墨付きがあるように感じる人は多いでしょう。実際には、個人でも事業者でも開設できます。認証バッジのないアカウントは、審査を受けていません。
もう1つの理由は、自動応答が使えること。登録直後に、あいさつ文や次の案内を自動で送れます。多くの人を少ない手間でふるいにかけ、反応した人だけを個人アカウントへ引き継ぐ。入口として都合がよい仕組みなのです。
投資グループLINEに招待された後に何が起きるのか?
今回の男性は、元役員を名乗る人物を友だち追加したあと、投資グループに招待されました。グループでは銘柄の話や相場の見通しが流れます。すぐに送金を求められるわけではありません。
同種の事例では、参加者が「今日も利益が出ました」と画像つきで報告を重ねます。先生役への感謝の言葉も続きます。数週間この空気にひたると、アプリを勧められたときに断る理由が見つからなくなります。
「元役員」「アシスタント」を名乗る人物の役割とは?
今回の事件には、2人の登場人物がいます。金融情報配信会社の元役員を名乗る人物。そしてアシスタントを名乗る人物です。1人で全部やればよさそうなのに、なぜ役を分けるのでしょうか。そこには、信用させるための分業があります。
金融情報配信会社の元役員という肩書きが使われる理由とは?
「元役員」は便利な肩書きです。現役ではないため、会社に問い合わせても在籍を確かめにくい。それでいて、業界の内側を知っていそうな印象は残ります。
金融情報の配信会社という設定にも意味があります。証券会社の社員を名乗ると、登録の有無を調べられてしまいます。情報配信なら、その心配が小さい。確かめにくい肩書きほど、疑ってかかる価値があります。
アシスタント役は何を担当しているのか?
アプリを勧めたのは、元役員本人ではなくアシスタントでした。送金の案内や操作の説明といった実務は、こちらが受け持ちます。
先生役はお金の話をしません。だから先生の権威は傷つかないのです。質問や不安は、アシスタントが個別チャットで受け止めます。相談相手がいる安心感が、送金への抵抗を下げていきます。
実在の人物や企業の名前が無断で使われることはあるのか?
あります。金融庁は、著名人や実在する業者をかたる勧誘に注意を呼びかけています。写真や経歴がネットで見つかっても、本人が運営している証拠にはなりません。
確かめる方法は1つ。その人物や会社の公式サイトを自分で検索し、そこに載っている窓口へ問い合わせることです。LINEで教えられた連絡先は使わないでください。
「株のAI取引アプリ」は何が偽物なのか?
アプリがスマホに入り、画面にチャートや残高が並ぶ。それだけで本物らしく見えてしまいます。けれど、見た目を作ることと、実際に株を売買することは別の話です。偽アプリのどこが偽物なのかを、3つの角度から確かめます。
アプリ上の利益表示はなぜ信用できないのか?
画面の数字は、アプリを作った側が自由に決められます。証券取引所とつながっていなくても、残高が増えていく画面は作れます。男性が見た「1日で出た利益」も、表示されただけの数字でした。
送金先にも目を向けてみましょう。本物の証券会社なら、入金先は自分名義の証券口座です。指定された別の口座へ振り込んだ時点で、お金はアプリの中には入っていません。画面の残高と、実際のお金の行き先は無関係です。
公式ストア以外からの導入を求められるのはなぜか?
今回のアプリの入手方法は公表されていません。ただ、同種の事例では、LINEで送られたURLからインストールさせる形が目立ちます。App StoreやGoogle Playの審査を通らないためです。
iPhoneで「プロファイルのインストール」を求められたら要注意。Androidで「提供元不明のアプリを許可」と案内された場合も同じです。ストアに載っていれば安全とは言い切れません。それでも、ストア外からの導入は、それだけで断る理由になります。
「AIが自動で売買する」という説明のどこに矛盾があるのか?
日本で株の売買を仲介したり、お金を預かって運用したりするには、金融商品取引業の登録が必要です。AIを使うかどうかは関係ありません。登録のない業者が「AIで運用します」と言えば、それは無登録営業です。
もう1つの矛盾は利回り。1日で目に見える利益が出続ける仕組みがあるなら、見ず知らずの人にLINEで配る必要がありません。「AIだから勝てる」は、説明を省くための言葉として使われています。
なぜ1日で利益が出ると追加送金してしまうのか?
10万円が20万円に、そして100万円に。冷静なときに数字だけ見れば、不自然に感じるかもしれません。それでも当事者は送金を続けてしまいます。判断力の問題ではありません。そうなるように、順序が組み立てられているからです。
初回を10万円の少額から始めさせる狙いとは?
10万円なら、失っても生活は揺らがない。そう思える金額から始めさせるのが狙いです。「まず試してみる」という気持ちで、最初のハードルを越えさせます。
1度送金すると、相手を信じた自分を否定しにくくなります。ここで利益が表示されれば、判断は正しかったと感じるでしょう。最初の少額は、お金を取るためではなく信用を取るための段階です。
20万円・100万円・60万円と増額していく心理とは?
利益が出ている画面を見ると、「もっと入れていれば」という気持ちが生まれます。アシスタントはそこで、元手を増やす提案をしてきます。3回目が100万円に跳ね上がったのは、この流れの中でした。
同種の事例では、「今週だけの特別枠」「上位プランは100万円から」と期限や条件をつけてきます。考える時間を与えないためです。急がされたときほど、1日置く。 それだけで防げる被害があります。
グループ内の利益報告が送金を後押しする仕組みとは?
グループの参加者が全員、本物の投資家とは限りません。同種の事例では、詐欺グループ側の人間が参加者を装っているとされています。利益報告も感謝の言葉も、演出の可能性があります。
人は、周りが同じ行動をとっていると安心します。10人が「増えました」と言う中で、1人だけ疑い続けるのは難しいものです。グループの人数や盛り上がりは、安全の根拠になりません。
出金しようとするとアプリが起動しなくなるのはなぜか?
男性が被害に気づいたのは、出金を試みた8月3日でした。アプリが開かなくなったのは、故障ではありません。お金を返すつもりが最初からないため、出金の段階で関係を断つのです。ここでは、終わり方のパターンを見ておきます。
出金申請の段階で連絡が途絶える理由とは?
詐欺グループにとって、出金の申し出は「これ以上は送金しない」という合図です。追加で取れないと判断すれば、アプリを止め、LINEをブロックします。グループごと消えることもあります。
アプリが開かなくなると、取引の記録も見られなくなります。だからこそ、少しでも違和感を覚えた時点で、画面を保存しておくことが大切です。証拠は、相手の手元ではなく自分の手元に残しましょう。
「保証金」「税金」名目で追加請求される事例とは?
すぐに消えず、もう1段階お金を求めてくるパターンもあります。警察庁が紹介している事例では、出金の条件として「保証金が必要」「税金として数%かかる」と告げられていました。
本物の証券会社では、利益にかかる税金は口座内で差し引かれるか、確定申告で納めます。業者へ先に振り込む仕組みはありません。「引き出すために払う」は、どんな名目でも応じない。 これだけ覚えておけば、被害の上積みは防げます。
振込先に個人名義や無関係な法人名義の口座が指定される意味とは?
今回の振込先の名義は公表されていません。ただ、同種の事例では、個人名義や投資と関係のなさそうな法人名義が指定されています。送金のたびに口座が変わることもあります。
こうした口座は、他人から買い取ったり、だまし取ったりしたものです。凍結されると次の口座に切り替えるため、名義が変わります。振込先の名義が、アプリの運営会社名と違う。それは中止のサインです。
勧められた投資アプリが実在するか確認する方法とは?
富山中央警察署は、2つの確認を呼びかけています。アプリをインターネットで検索すること。業者が金融庁に登録されているか調べること。どちらもスマホで5分ほどあれば終わります。具体的にどこを見ればよいのかを整理します。
アプリ名をインターネットで検索すると何が分かるのか?
アプリ名に「詐欺」「出金できない」を添えて検索してみてください。同じ名前で被害の相談が出ていれば、そこで答えが出ます。運営会社の公式サイトが見つからない場合も、判断材料になります。
何も出てこないこともあります。偽アプリは名前を次々に変えるためです。「悪い情報がない」は「安全」の意味ではありません。検索で白黒つかなければ、次の登録確認に進みましょう。
金融庁の登録業者一覧ではどこを確認すればよいのか?
金融庁のサイトに「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」があります。この中の金融商品取引業者のリストを開き、業者名で探します。載っていれば、登録番号と所在地、電話番号が確認できます。
名前が見つかっても、まだ安心はできません。登録業者の名前をかたる手口があるからです。リストに載っている電話番号へ自分でかけ、そのアプリや担当者が本物かを聞く。ここまでやって確認完了です。
無登録業者の警告リストはどう使うのか?
金融庁は「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」というページも公開しています。警告を出した業者の名前が並んでいます。勧められた業者名がここにあれば、取引してはいけない相手です。
注意したいのは、載っていない場合の読み方。警告は被害や情報が集まってから出るため、新しい業者は載っていません。登録リストにない時点で、警告リストの結果にかかわらず見送る。この順番で考えると迷いません。
同じ勧誘を受けている場合に取るべき行動とは?
ここまで読んで、自分の状況と重なる点があったかもしれません。まだ送金していないなら、被害はゼロで止められます。やることは多くありません。確認、記録、離脱の3つです。順番を間違えないことだけ意識してください。
送金前に確認すべき項目とは?
次の表で、当てはまるものを探してみてください。
| 確認する項目 | 当てはまったら |
|---|---|
| 動画の概要欄やSNSからLINEに誘導された | 要注意 |
| 会ったことのない人から投資を勧められている | 要注意 |
| アプリをストア以外のURLから入れるよう言われた | 中止 |
| 業者名が金融庁の登録リストにない | 中止 |
| 振込先が個人名義、または運営会社と違う名義 | 中止 |
| 出金に保証金や税金の先払いを求められた | 中止 |
| 「必ずもうかる」「元本保証」と言われた | 中止 |
「中止」が1つでもあれば、送金しないでください。迷ったときは、送金の前に#9110か188へ電話を。相談料はかかりません。
LINEグループと相手のアカウントはどう処理すればよいのか?
退会やブロックの前に、記録を残します。
- トーク画面のスクリーンショット
- 相手のプロフィール画面
- グループ名と参加者のリスト
- 送られてきたURL
記録が済んだら、相手をブロックし、グループを退会します。ブロック時に「通報」を選ぶと、LINE側に情報が届きます。退会の理由を相手に伝える必要はありません。引き止めの言葉を聞く前に離れてください。
インストール済みのアプリは削除してよいのか?
削除してかまいません。ただし先に、アプリの画面を保存します。残高、取引履歴、入金先の案内、運営者情報。開けるうちに撮っておくと、相談のときに役立ちます。
iPhoneの場合は、「設定」の「VPNとデバイス管理」に見覚えのないプロファイルがないかも見てください。あれば削除を。アプリに登録したパスワードをほかのサービスでも使っているなら、そちらの変更もお忘れなく。
すでに送金してしまった場合の相談先とは?
送金してしまった場合、早さがその後を左右します。恥ずかしい、家族に知られたくない。そう感じて動けなくなる人は少なくありません。けれど、窓口の担当者は同じ相談を日々受けています。連絡先を表にまとめたうえで、順に説明します。
| 窓口 | 連絡先 | 受付 | 相談できること |
|---|---|---|---|
| 警察相談専用電話 | #9110 | 平日の日中(地域で異なる) | 被害の届け出、今後の対応 |
| 振込先の金融機関 | 各行の窓口 | 各行による | 口座の凍結、救済法の手続き |
| 金融庁 詐欺的な投資に関する相談ダイヤル | 0570-050588 | 平日10:00〜17:00 | 業者の登録確認、情報提供 |
| 消費者ホットライン | 188 | 窓口により異なる | 消費生活センターの案内、助言 |
警察にはどのように届け出ればよいのか?
最寄りの警察署へ行くか、#9110に電話します。緊急でなければ、110番ではなく#9110を使ってください。持参するものは、振込の明細、LINEのやり取り、アプリの画面、相手のアカウント情報です。
時系列のメモがあると、話が早く進みます。いつ、誰から、何を言われ、いくら送ったか。箇条書きでじゅうぶんです。警察への届け出は、振込先口座の凍結にもつながります。
振込先の金融機関に連絡する理由とは?
理由は、口座にお金が残っているうちに止めるためです。詐欺グループは入金をすぐ引き出します。凍結が早いほど、残高が残る可能性は上がります。
連絡先は、振り込んだ先の銀行です。振込明細に書かれた銀行名と支店名を確かめ、詐欺被害の窓口に電話します。自分が使った銀行にも伝えておくと、手続きの案内を受けられます。
金融庁の相談ダイヤルと消費者ホットラインでは何を相談できるのか?
金融庁の相談ダイヤルでは、業者の登録状況を確かめられます。勧誘の内容を伝えれば、注意喚起の材料にもなります。ウェブの受付フォームは24時間使えます。
188にかけると、近くの消費生活センターにつながります。何から手をつければよいか分からない。そんな段階でも、状況を整理する手助けをしてくれます。どこに電話するか迷ったら、まず188で大丈夫です。
だまし取られたお金は戻ってくるのか?
いちばん気になるのは、ここかもしれません。先に結論をお伝えすると、全額が戻るケースは多くありません。ただ、ゼロと決まったわけでもありません。銀行振込で送金した場合に使える制度があります。条件と限界を順に説明します。
振り込め詐欺救済法で返金される条件とは?
振り込め詐欺救済法は、詐欺に使われた口座を凍結し、残っているお金を被害者に分配する制度です。今回のように指定口座へ振り込んだ場合は、対象になりえます。
流れは次のとおりです。
- 金融機関が口座を凍結する
- 預金保険機構のサイトで公告が出る
- 被害者が金融機関に支払いを申請する
- 残高が被害者に分配される
口座の残高が1,000円未満の場合、分配は行われません。暗号資産で送った場合は、この制度の対象外です。
口座凍結が遅れると返金額はどうなるのか?
分配されるのは、凍結した時点で口座に残っていた金額だけです。すでに引き出された分は戻りません。被害者が複数いれば、残高を被害額に応じて分け合います。
たとえば残高が50万円、被害の合計が500万円なら、戻るのは被害額の1割ほど。返金額は「どれだけ早く口座を止められたか」で決まります。気づいたその日に動く意味が、ここにあります。
「返金請求を代行する」という勧誘が2次被害になる理由とは?
被害にあったあと、「お金を取り戻せます」という広告やDMが目に入るようになります。着手金を払ったのに何も進まない。そんな相談が消費生活センターに寄せられています。
警察や公的機関を名乗って「返金手続きに手数料が必要」と連絡してくる手口もあります。公的機関が返金のために先払いを求めることはありません。弁護士に相談したい場合は、地域の弁護士会や法テラスを通すと安心です。
SNS型投資詐欺の被害はどの程度発生しているのか?
今回の190万円は、珍しい例ではありません。同じ型の被害は全国で起きています。数字を見ると、「自分は大丈夫」という感覚がどれほど当てにならないかが伝わるはずです。警察庁の統計から、3つの点を取り上げます。
警察庁の統計では何件・いくらの被害が出ているのか?
令和7年のSNS型投資詐欺は、認知件数が9,538件、被害額が1,274.7億円でした(暫定値)。件数は前年から48.7%増えています。1件あたりに直すと、1,300万円を超える計算です。
令和8年上半期は、特殊詐欺全体で22,031件、1,816.2億円(暫定値)。1日あたり約10億円の被害です。警察庁は、前年同期と比べてSNS型投資詐欺の増加が目立つとしています。
50代の被害が多い理由とは?
令和7年の統計では、被害は40〜60代に多く、50代が最多でした。今回の男性も50代です。
背景として考えられるのは、老後資金への不安です。退職が視野に入り、「今のうちに増やしたい」という気持ちが強まる年代。まとまった貯蓄があり、スマホでの送金にも慣れています。投資に前向きで、資金も操作スキルもある。その条件がそろう層が狙われています。
令和8年から統計上の分類が変わった点とは?
令和8年から、SNS型投資詐欺は特殊詐欺の手口の1つとして集計されるようになりました。それまでは、特殊詐欺とは別枠の扱いでした。
このため、令和7年以前の「特殊詐欺の被害額」と令和8年の数字は、そのまま比べられません。ニュースで「特殊詐欺が急増」と聞いたときは、分類の変更も頭に置いておくと、数字を読み違えずに済みます。
よくある質問(FAQ)
最後に、細かいけれど気になる疑問をまとめました。リンクを押してしまった。友だち追加してしまった。そんな段階の人が抱きやすい不安を中心に選んでいます。当てはまるものから読んでみてください。
概要欄のリンクを押しただけで被害に遭うのか?
リンクを押してLINEの友だち追加画面が開いただけなら、金銭の被害は起きません。この手口は、やり取りを重ねて送金させるものだからです。
気をつけたいのは、リンク先がログイン画面やアプリのダウンロード画面だった場合。IDやパスワードを入力したなら、すぐ変更してください。何も入力していなければ、ページを閉じて終わりです。
LINEで友だち追加をした場合、個人情報は悪用されるのか?
友だち追加で相手に伝わるのは、LINEの表示名とプロフィール画像、ステータスメッセージです。電話番号や住所は伝わりません。
ただし、やり取りの中で本名や勤務先、資産額を話していれば、それは相手の手元に残ります。別の勧誘に使われる可能性があります。ブロックしたあとも、知らない番号やアカウントからの連絡にはしばらく用心を。
少額の出金ができた場合は本物の投資と考えてよいのか?
考えないでください。少額の出金に応じるのは、信用させるための手順の1つです。沖縄では、実際に引き出せたことで相手を信用し、約2,300万円を失った事例が報じられています。
詐欺グループにとって、数万円の出金は経費のようなもの。「出金できた」は安全の証明になりません。判断の基準は、金融庁の登録があるかどうか。この1点です。
AIを使った株の自動売買サービスはすべて詐欺なのか?
すべてではありません。金融庁に登録された証券会社や投資運用業者が、アルゴリズムを使った運用サービスを提供しています。ロボアドバイザーと呼ばれるものが代表例です。
正規のサービスとの違いは3つあります。
- 金融庁の登録番号が公式サイトに明記されている
- 入金先が自分名義の口座になっている
- 元本割れのリスクが説明されている
LINEのグループで勧められ、指定された別名義の口座へ振り込む。この形をとる正規のサービスはありません。
家族が同様のLINEグループに参加している場合はどう伝えればよいのか?
「それ詐欺だよ」と頭ごなしに言うと、かえって意地になりがちです。本人は利益が出ていると信じています。否定ではなく、確認をいっしょにやる形に持ち込むのがコツです。
たとえば、こんなメッセージから始めてみてください。
この前話してた投資のアプリ、ちょっと気になって調べてみたよ。
金融庁のサイトで業者の登録を確認できるらしいから、今度いっしょに見てみない?
登録があれば安心だし、5分で終わるみたい。
それでも聞き入れてもらえないときは、#9110や188に家族の立場で相談できます。
まとめ
動画の概要欄からLINEへ。グループで信用を作り、偽アプリの数字で送金を重ねさせる。富山市の事例は、この順序をそのままたどっていました。見抜くポイントは、金融庁の登録と振込先の名義です。この2点を送金前に確かめるだけで、ほとんどの勧誘は止められます。
記事では触れませんでしたが、動画サイトやLINEには通報機能があります。不審な概要欄リンクを見つけたら通報しておくと、次に見る人の被害を減らせます。銀行アプリで振込の上限額を下げておくのも、地味ながら効く備えです。まずは今日、スマホに入っている投資関連のLINEグループを見直してみてください。会ったことのない相手が運営しているものがあれば、金融庁のリストで名前を探すところから始めましょう。
参考文献
- 「動画の概要欄からLINEへ…「株のAI取引アプリ」で190万円騙し取られる SNS投資詐欺で富山市の50代男性被害 警察が注意呼びかけ」-「TBS NEWS DIG(チューリップテレビ)」
- 「SNS型投資詐欺 | 最新の詐欺」-「警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ」
- 「令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」-「警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ」
- 「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」-「警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ」
- 「特殊詐欺の認知・検挙状況等について」-「警察庁Webサイト」
- 「それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!」-「金融庁」
- 「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」-「金融庁」
- 「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」-「金融庁」
- 「(注意喚起)SNS投資詐欺」-「一般社団法人 第二種金融商品取引業協会」
- 「振り込め詐欺救済法に基づく公告」-「預金保険機構」
- 「消費者ホットライン」-「消費者庁」
- 「「AIが株を自動的に売買して利益を上げてくれる」うその投資話を持ち掛けられ50代男性が現金約2300万円被害のSNS型投資詐欺」-「QAB琉球朝日放送」
- 「「SNS型投資詐欺」の被害が止まらない!」-「東洋経済オンライン」
